経理の外注先は、個人か・事務所か・BPOか|3つの型を「担当が止まったとき誰が代わるか」で比べる
経理の外注先を探し始めた方から、いちばん多く受けるご相談がこれです。「フリーランスの方に頼むのと、会計事務所に頼むのと、代行会社に頼むのと、何が違うんですか」。
この質問に対して、料金と対応業務の一覧表をお送りするのは簡単です。ただ、それを3社分並べても決まらない。実際、並べた結果いちばん安いところに決めて、半年後に「担当の方が体調を崩されて、今月の締めが止まっています」というご連絡をいただくことがあります。比較の軸が料金と業務範囲だけになっていると、この結末が読めません。
この記事では、経理の外注先を大きく3つの型に分け、「担当が止まったとき、誰が代わるか」という1点を主軸に比べます。当社(シメゴ)は3つ目のBPO型にあたりますが、個人の方に委託したほうがよい会社は実在しますので、その条件も先に書きます。ここを隠して比較記事を書いても、選ぶ側の役には立ちません。
なお「そもそも外注すべきか、社内で採用すべきか」という手前の判断は経理担当を1人雇う vs 経理代行に、外注に出せる業務の範囲そのものは経理の外注に整理しています。この記事は「出すと決めた人が、どの型を選ぶか」だけを扱います。
1|経理の外注先は、実務上3つの型に分かれる
看板の名前はさまざまですが、経理を受ける側の体制は、実務上ほぼ次の3つに収れんします。
型A|個人(フリーランス経理・個人の記帳代行者)
実務経験のある方が個人で受けている形です。元経理部門の方、育児等で一度離職された方、複数社を掛け持ちしている方などが該当します。クラウドソーシング経由でも、紹介経由でも、体制としては同じです。
特徴は、受ける人と作業する人が同一であること。これは長所でも短所でもあります。話が早く、こちらのやり方に合わせてもらいやすい。一方で、その方が動けなくなったときに代わりがいません。
型B|会計事務所・税理士事務所
顧問税理士がそのまま記帳まで引き受ける形、または記帳代行を主業務として提供している事務所です。税務申告と地続きになっているのが最大の特徴です。
ただし事務所によって、記帳をどこまで自前で持つかは大きく違います。所内の担当者が入力するところもあれば、外部の記帳代行会社に再委託しているところもあります。顧問料に記帳が含まれているのかどうかも事務所ごとに異なるため、ここは契約前に必ず確認する必要があります(記帳代行は税理士に頼むべきか)。
型C|BPO・経理代行会社
複数名のチームで受け、業務を工程に分けて処理する形です。当社もここに入ります。担当者が1人で全部やるのではなく、入力・確認・報告を分けて回します。
特徴は、人ではなく手順に業務が乗っていること。そのぶん立ち上がりに手間がかかり、こちらの独自ルールをそのまま飲むことは型Aより苦手です。BPOという言葉そのものの整理は経理BPOとはに書きました。
この3つは「規模の大小」ではありません。誰が作業し、誰が確認し、誰が代わるかという体制の違いです。だから比較のとき、社員数や設立年数を並べてもあまり意味がありません。
2|まず結論|3つの型の比較表
先に全体を置きます。細かい理由は次章以降で書きます。
| 比べる軸 | 型A 個人 | 型B 会計事務所 | 型C BPO・代行会社 |
|---|---|---|---|
| 担当が止まったとき | 代わりがいない。復帰待ちか、探し直し | 所内で振り替えられる場合が多いが、繁忙期は遅れる | チーム内で振り替える前提。手順書が代替の根拠になる |
| 税務との接続 | 申告は別途、税理士が必要 | そのまま申告まで続く | 申告は顧問税理士へ。データを渡す形 |
| 立ち上がりの速さ | 速い。翌月から動くことが多い | 中程度。事務所の受入時期に左右される | 遅い。現状把握と手順化に時間がかかる |
| こちらのやり方への追随 | 高い。独自ルールにも合わせてもらいやすい | 中。事務所の様式に寄る | 低〜中。標準化を提案されることが多い |
| 費用の出方 | 低めになりやすい。ただし範囲外は都度 | 顧問料に含む/別建てが事務所で分かれる | 範囲を決めて月額。範囲外は増える |
| やめたときに社内へ戻るもの | 個人のやり方に依存。手順が残らないことがある | 帳簿と申告書は残る。日次の手順は残らないことが多い | 手順書とフローが残る設計にできる |
| 情報管理の形 | 個別に取り決める必要がある | 事務所の規程による | 会社としての規程・契約で担保する |
表の1行目が、この記事でいちばんお伝えしたい行です。ここだけは、契約前に必ず言葉にして聞いてください。
3|主軸|「担当が止まったとき、誰が代わるか」
経理は、止まると翌月に持ち越せない仕事です。給与の支払日は動きませんし、支払期日も動きません。だから外注の比較では、平常時の性能より止まったときの復旧のしかたのほうが効きます。
止まり方は3種類ある
実務で起きるのは、次の3つです。
- 短期で止まる。体調不良、家庭の事情、繁忙。数日〜2週間。
- 長期で止まる。入院、転居、他業への転換。1か月以上。
- 関係が終わる。契約解除、条件交渉の決裂、先方からの辞退。
型Aで問題になりやすいのは1つ目と2つ目です。悪意はありませんし、能力の話でもありません。1人で受けている以上、構造的に代わりがいないというだけのことです。
そして、代わりがいないことの本当の痛みは「今月が遅れる」ことではありません。その人の頭の中にしかない処理ルールが、一緒に止まることです。この取引先はこの科目で、この支払だけは先方の締めが特殊で、という判断がどこにも書かれていない。これは社内で属人化が起きるときとまったく同じ構造です(経理の属人化)。外注しても属人化は解けません。属人化の場所が社内から社外に移るだけです。
契約前に聞く質問は、この3つで足ります
- 担当の方が2週間動けなくなったとき、誰が処理しますか。「調整します」という答えは、代わりがいないという意味です。役割や氏名まで出るかどうかで判断できます。
- その代わりの方は、当社の処理ルールをどこで知りますか。手順書があるのか、口頭で引き継ぐのか。「引き継ぎます」だけの場合、復旧に時間がかかると見込んでおくほうが安全です。
- 契約が終わるとき、社内には何が戻りますか。データだけなのか、手順書とフローも戻るのか。ここは後述しますが、費用より効きます。
3つとも、型Aに不利な質問に見えるかもしれません。ただ、型Aでも1と2に答えられる方はいます。たとえば「同業の方と相互にバックアップしている」「作業手順はスプレッドシートに書いて共有している」と即答される方です。型で決めつけず、この2問の答えで判断してください。
4|第2の軸|税務の入口を、どちらが持つか
2つ目に効くのが、税務との接続です。ここは型Bが明確に強い領域です。
前提として、税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士法第2条第1項に定める税理士の業務であり、税理士でない者は行えません。当社も行いません。つまり型Aと型Cは、どれだけ経理実務ができても、申告そのものには入れません。
したがって選択は次のようになります。
| いまの状態 | 相性のよい型 | 理由 |
|---|---|---|
| 顧問税理士がいない | 型B | 記帳と申告を分けると、結局どこかで税理士を探すことになる |
| 顧問税理士がいて、記帳も任せている | 型Bの継続/型Cへの分離 | 顧問料の内訳を先に確認する。含まれているなら動かす理由は薄い |
| 顧問税理士がいて、記帳は社内 | 型Cまたは型A | 税務の入口は動かさず、日次の作業だけを外に出す形 |
| 月次の数字を早く見たい | 型Cが向きやすい | 申告基準ではなく、月次の締め日基準で回す設計にできる |
3行目と4行目が、当社にご相談をいただく典型です。「税理士の先生には申告をお願いしたい。ただ、月次の数字が翌々月にしか出てこないのを直したい」という形。この場合、税理士と代行の役割は競合しません。両者の線引きは税理士と経理代行は何が違うかに詳しく書きました。
逆に、2行目の状態で「安くなりそうだから」という理由だけで型Cに切り出すのは、あまりおすすめしません。顧問料の中に記帳が含まれている場合、記帳だけ外に出しても顧問料が同じ額だけ下がるとは限らないためです。まず内訳を聞いてください。
5|第3の軸|やめたときに、社内へ何が戻るか
外注の比較で最も抜けやすいのが、終わり方の設計です。始めるときに終わりの話をするのは気が引けますが、ここを決めていないと、やめたくてもやめられない状態になります。
戻ってくるものは、大きく3層あります。
- データ。仕訳、証憑、マスタ。これはどの型でも返ります。契約書に明記されていれば問題になりません。
- 手順。どの証憑をどう受け取り、どの順で処理し、どこで確認しているか。ここが返らないことが多い。
- 判断の理由。なぜその科目なのか、なぜこの取引先だけ処理が違うのか。ほぼ返りません。
2と3が返らないと、次の委託先または社内担当が、ゼロから同じ作業をやり直すことになります。これは委託先を変えるたびに繰り返されます。だから契約時に「手順書は誰の資産か」を決めておいてください。当社では手順書は依頼元の資産という前提で作っていますが、これは業界の標準ではありません。事業者ごとに違うので、必ず確認してください。
社内へ戻す方向の話は経理の内製化に、委託先を切り替えるときの具体的な段取りは経理の引き継ぎにまとめています。
6|個人(型A)のほうが向いている会社の条件
当社はBPO型ですが、次の条件に当てはまる会社は、型Aのほうが素直だと考えています。営業上は不利になりますが、合わない会社に入っても双方が消耗するだけなので、はっきり書きます。
- 取引件数が少ない。月の仕訳が数十件程度で、例外処理もほとんどない。この規模で工程を分けても、分けた分だけ手間が増えます。
- 止まっても数週間なら耐えられる。支払と給与が社内で完結していて、外注しているのが記帳と資料作成だけ、という場合です。
- 社内に、内容を確認できる人がいる。誰も見られない状態で個人に委託すると、間違いに気づくのが決算のときになります。ここは規模に関係なく効きます。
- やり方を変えたくない事情がある。親会社や取引先の様式が決まっていて、標準化の提案がそもそも通らない場合です。
個人事業主・フリーランスの方が自分の経理を外に出す場合の損益分岐は、個人事業主・フリーランスの経理は外注すべきかに別途書いています。
逆に、次のいずれかがある会社は型Aだと苦しくなります。給与計算を含む・支払の実行を含む・月次を締め日どおりに出す必要がある・監査を受ける予定がある。いずれも「止まると代わりが要る」領域だからです。
7|比較の進め方|見積を取る前にやること
3社に相見積を出す前に、社内で決めておくと比較が成立します。逆にここが決まっていないと、各社が違う前提で見積を出してくるため、金額を並べても比べられません。
| 決めること | 決め方 | 決めないと起きること |
|---|---|---|
| 出す業務の範囲 | 工程単位で線を引く(受け取る/入力する/確認する/報告する) | 「経理一式」で見積が来て、後から範囲外が積み上がる |
| 社内に残す確認者 | 誰が最終的に数字を見るかを1名決める | 誰も見ない状態になり、誤りが決算まで残る |
| 締め日と提出物 | 何日までに何が出ていればよいかを日付で書く | 「月次を早く」が合意にならず、遅れの責任が曖昧になる |
| 止まったときの許容日数 | 何日止まると業務に影響が出るかを書き出す | 体制の比較ができず、価格だけの比較になる |
業務単位で切るか工程単位で切るかの考え方は経理業務のアウトソーシングに、金額の内訳をどう読むかは経理代行の料金相場に書きました。選定時のチェック項目そのものは経理代行サービスの選び方にまとめてあります。
相見積のとき、同じ1枚の依頼文を3社に渡してください。各社の営業に口頭で説明すると、必ず前提がずれます。上の4項目を書いた1枚があれば、返ってきた見積の差が、体制の差として読めるようになります。
シメゴの場合
当社は型Cです。したがって、立ち上がりは型Aより時間がかかります。現状の作業を工程に分けて、手順書の形にしてから受けるためです。ここは短所として先に申し上げます。
そのうえで当社が引き受けているのは、担当が止まっても処理が続く体制と、やめるときに手順書が依頼元に残る形の2点です。無料コスト診断では、いまの経理業務を工程に分けて、外に出す部分・社内に残す部分・そもそもやめてよい部分に仕分けたうえで概算をお返ししています。
仕分けた結果、「この規模なら個人の方に依頼されたほうが合理的です」とお伝えすることもあります。その場合は、その旨と、依頼するときに確認しておくべき項目をお渡しして終わりにします。無理に当社の型に合わせていただく必要はありません。中小企業がどこから出すかの順番は中小企業の経理アウトソーシングに、丸投げできる範囲の線引きは経理は丸投げできるかに書いています。
型を比べる前に、社内で決めておくことが3つあります。外に出す目的・範囲・社内に残す役です。頼み先を選ぶ段階が、アウトソーシングの検討全体のどこに当たるかは経理アウトソーシングは、何から決めると後戻りしないかに順番で整理しています。
まとめ
経理の外注先は、個人・会計事務所・BPOの3つの型に分かれます。料金と業務範囲を横に並べても決まりません。体制が違うので、同じ土俵に乗っていないためです。
比べる軸は3つに絞ってください。担当が止まったとき誰が代わるか。税務の入口をどちらが持つか。やめたときに社内へ何が戻るか。この3つに答えられる相手なら、どの型でも大きく外しません。
そして、取引件数が少なく、数週間止まっても耐えられ、社内に確認できる人がいる会社であれば、個人の方への委託がいちばん素直です。逆に、給与や支払の実行を含む場合、締め日どおりに月次を出す必要がある場合は、代わりがいる体制を選んでください。ここは価格差では埋まりません。
どの型が合うか、仕分けからお返しします。
いまの経理業務を工程に分けて、出す部分・残す部分・やめてよい部分に仕分けたうえで概算をお出しします。「個人の方に頼まれたほうが合理的です」という結論もそのままお伝えします。
無料コスト診断を受ける →※本記事は一般的な実務の整理であり、個別の会計処理・税務上の取扱いについて結論を保証するものではありません。委託先の体制・契約条件・料金は事業者により異なりますので、実際の判断は各社の提示内容をご確認ください。税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士法第2条第1項に定める税理士の業務であり、当社では行いません。労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成・提出代行は社会保険労務士の業務であり、当社では行いません。労働者派遣に該当する形での役務提供は行っておりません。