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バックオフィスを外注する順番|経理・労務・総務のどれから出すと失敗しないか

キーワード: バックオフィス 外注 | シメゴ(運営: Never Red株式会社)

「バックオフィスを外注したい」というご相談で、私がいちばん多く聞き返しているのは順番の話です。「経理・労務・総務のうち、どれから出す想定ですか」。

この質問をすると、半分くらいの方が「全部まとめて」と答えます。気持ちはよく分かります。管理部門の負荷が限界に来ているから相談しているのであって、一つずつ順番に、と言われても待てない。

ただ、3領域を同時に出した会社が、3か月後にいちばん疲れているというのが、私が見てきた範囲での実感です。理由は単純で、外注は「渡す作業」を先に増やすからです。渡す先が3つに増えると、社内の窓口だけが3倍になります。

この記事では、経理・労務・総務をどの物差しで並べると外に出しやすい順番になるのかを書きます。領域ごとに何が外注でき、何が社内に残るのかという全体像はバックオフィス代行とはに整理しました。ここでは「どれから出すか」という一点だけを扱います。

1|「バックオフィス」は、性質の違う3つの仕事の総称でしかない

まず、まとめて呼ばれている3領域が、外注という観点ではまったく別物だという確認から始めます。

領域主な中身仕事の発生源間違えたときの現れ方
経理記帳、支払、請求、月次締め、決算補助取引の記録(証憑)数字が合わない。後から直せる
労務給与計算、勤怠集計、社会保険・雇用保険の手続き、年末調整人と法定の期限本人の手取りと社会保険に直結。直すのに本人説明が要る
総務備品、契約書の保管、来客・電話、庶務、社内問い合わせその場の出来事止まらない。ただし誰も記録していない

この表で見てほしいのは、右2列です。経理は「モノ(証憑)」から仕事が始まり、労務は「人と期限」から始まり、総務は「その場の出来事」から始まります。

外注というのは、社外の相手に情報を渡して作業をしてもらう形です。したがって渡せる形になっている情報が多い領域ほど、外に出しやすい。逆に、渡せる形になっていない情報が中心の領域は、外注しても「説明する仕事」が新しく増えます。

2|出す順番を決める4つの物差し

実務では、次の4つで並べると判断がぶれません。感覚ではなく、この4項目で領域を採点してみてください。

物差し1|判断の量が少ないか

作業のうち、社内の事情を知らないとできない判断がどれだけ含まれているか。判断が少ないほど、外に出したときの往復が減ります。

ここは「作業時間」ではなく「質問が飛んでくる回数」で測ってください。質問1件の重さは、回答時間ではなく社内の誰かに聞き直す往復で決まります。工程ごとに何が残るかは経理事務の代行で分解しました。

物差し2|情報が「渡せる形」で集まっているか

通帳明細、カード明細、請求書のPDF、勤怠データ。すでにデータとして存在しているものは、そのまま渡せます。一方で「あの件どうなった」「あの人が知っている」という形で存在している情報は、渡す前に文字にする作業が発生します。

属人的に持たれている情報が多い領域から先に出すと、外注の準備そのものが数か月かかります(経理の属人化)。

物差し3|止まったときに、誰にいつ影響するか

記帳が3日遅れても、その日に困る人はいません。給与の振込が3日遅れたら、全社員が即日困ります。影響が社員本人と法定期限に直結する領域ほど、外注の初期に置くとリスクが高い。

これは委託先の質の話ではなく、初月は必ずどこかで手戻りが出るという前提の話です。手戻りが起きても取り返しがつく領域から始めるのが順当です。

物差し4|法定の縛りで、そもそも誰がやれるか決まっていないか

領域によっては、外注先を自由に選べません。社会保険・労働保険の手続きの代行は社会保険労務士の業務であり、税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士の業務です。つまり労務と決算の一部は「誰に頼むか」の選択肢が最初から限られています

ここを知らないまま「まとめて1社に」と考えると、選定の途中で条件が合わなくなります。税理士との役割分担については税理士と経理代行の違いに書きました。

3|4つの物差しで並べると、経理が先頭に来る

3領域を、いま挙げた4項目で並べたものが次の表です。◎が「外に出しやすい」、△が「条件が要る」です。

物差し経理労務総務
判断が少ないか◎ 定型取引はルール化できる○ 就業規則と賃金規程で決まる部分が多い△ その場の判断が中心
情報が渡せる形か◎ 証憑・明細としてすでに存在○ 勤怠データはあるが例外処理が口頭で残る△ 大半が記録されていない
止まったときの影響◎ 数日なら取り返しがつく△ 給与は即日・全社員に及ぶ○ 止まらないが誰かが拾う
担い手の自由度◎ 決算・税務以外は選べる△ 手続きは社労士の業務◎ 制限はない

結果として、「経理 → 労務 → 総務」の順が、最も詰まりにくいという並びになります。ただしこれは一般解であって、次の2つの例外があります。

順番の目的は「早く楽になること」ではなく、1つ目の外注を成功体験にすることです。1つ目でつまずくと、2つ目を出すときに社内の合意が取れなくなります。ここが実務でいちばん効きます。

4|経理を最初に出すとき、どこで切るか

経理を先頭に置くのは、判断をルール化しやすく、情報がすでにデータとして存在し、数日の遅れが致命傷にならないからです。ただし経理も一枚岩ではありません。

切り出す業務先に出しやすい理由
1記帳(仕訳入力)証憑さえ渡せば完結する。判断部分はルール表で吸収できる
2請求書の発行・売掛の消込取引先ごとの型が決まっている。件数が多いほど効く
3支払(振込データの作成)作成までは出せる。承認と実行は社内に残す
4経費精算のチェック規程があれば判断が委託先で完結する
5月次の照合・試算表の確認ここまで出すと社内は「渡す」と「使う」だけになる

1から順に増やすのが安全です。3の支払は、作成と実行を必ず分けてください。振込の実行権限まで渡す設計は、金額の大小にかかわらず内部統制上おすすめしません。業務ごとの一覧は経理業務の一覧に、範囲ごとの費用感は経理代行の料金相場にまとめています。

5|労務は「給与計算」と「手続き」を分けて考える

労務を1つの塊として見ると判断を誤ります。実務では、性質の違う2つが同居しています。

給与計算社会保険・労働保険の手続き
中身勤怠集計、支給控除の計算、明細の作成資格取得・喪失、算定基礎、月額変更、労働保険の年度更新
頻度毎月・締切が固定都度+年次。期限が法令で決まる
誰に頼めるか計算の受託は制限なし申請書等の作成・提出代行は社会保険労務士の業務
外注の効き方毎月の山が消える。効果が大きい件数が少ないと効果は小さい。抜け防止の価値が主

したがって労務を出すときは、まず給与計算だけを切り出すのが基本形になります。詳しい線引きは給与計算のアウトソーシングに、代行との違いは給与計算代行に書きました。

もう一点。給与計算を外に出しても、勤怠の締めは社内に残ります。残業の承認、打刻漏れの修正、休暇の付与状況の確認。ここは会社の判断そのものなので、渡せません。「給与を外注したのに月末が空かない」という相談は、ほぼこの部分が原因です。

年末調整は毎年11月から動き出すので、出すなら夏のうちに決めておくと間に合います(年末調整の代行)。

6|総務を最後に置く理由と、その前にやること

総務が最後になるのは、価値が低いからではありません。渡せる形になっていない仕事の比率が、3領域でいちばん高いからです。

総務の仕事は、多くの会社で記録に残っていません。誰が何にどれだけ時間を使っているかが分からないまま、「大変そうだから外に出そう」となる。この状態で見積を取ると、委託先も範囲を決められず、結果として高い見積か、狭い範囲の見積が出てきます。

だから総務については、外注の前に1か月だけ棚卸しをすることをお勧めしています。やることは3つだけです。

  1. 発生した依頼を、来た順に1行ずつ記録する。内容・依頼者・かかった時間の3列で十分です。
  2. 1か月ぶんを、頻度と所要時間で並べ替える。上位5件で総時間の半分を超えることがほとんどです。
  3. 上位5件について、外注・システム化・廃止のどれかを当てる。この段階で、外注が正解の項目は意外に少ないと分かります。

総務は外注より先に「やめる」が効く領域です。稟議の紙回し、来客用の飲み物の在庫管理、郵便物の仕分け。廃止かシステム化で消える項目が、上位5件のうち2〜3件は入ります。時間の測り方は経理業務の効率化と同じ手順で構いません。

7|順番を間違えたときに、実際に起きること

ご相談の場で聞く「うまくいかなかった」話は、だいたい次の3つの型に収まります。

型1|3領域を同時に出して、窓口が3つになった

いちばん多い型です。委託先が3社になると、月末に3社ぶんの質問が同時に来ます。担当者は「作業をする人」から「3社に回答する人」に変わり、体感としては忙しさが変わりません。

この型の厄介な点は、どの委託先が悪いわけでもないことです。1社ずつ見れば正常に動いている。合計したときだけ回らない。だから原因の特定にも時間がかかります。

型2|担当者が辞めてから、いちばん難しい領域を出した

退職をきっかけに外注を検討する場合、残っている情報がいちばん少ない状態でスタートします。この状態で総務や労務の例外処理を出すと、委託先からの質問に答えられる人が社内にいません。

退職が先に決まっているなら、在職中に経理から出しておくのが正攻法です。引き継ぎで渡っていないのは手順ではなく判断の理由だという話は経理の引き継ぎに書きました。採用と代行のどちらを選ぶかは経理は採用か代行かに整理しています。

型3|アクセス権限だけ先に渡して、戻し方を決めていなかった

会計ソフト、銀行、勤怠システム、共有フォルダ。外注を始めると権限を渡すことになりますが、契約が終わった日にどう戻すかを決めていないケースが多い。

領域が3つに増えると、渡した権限も3系統に増えます。棚卸しの手間も3倍です。権限の渡し方と契約終了時のデータの戻し方は経理の外部委託に具体的に書きました。ここは最初の1社を選ぶ時点で決めておくべき項目です。

8|1つ目を出す前に決めておく5項目

領域がどれであっても、最初の委託を始める前に次の5つを文字にしておくと、2つ目以降が格段に楽になります。1つ目の契約で作った型を、そのまま使い回せるからです。

  1. 社内の窓口を1人に決める。複数人が個別に委託先とやり取りすると、決定事項が残りません。
  2. 渡す期限と手段を決める。「毎月◯日までに共有フォルダへPDFで」まで具体化します。
  3. 判断できないときの扱いを決める。質問して待つのか、仮の処理で先に進めるのか。
  4. 権限の範囲と、終了時の返却手順を決める。閲覧のみか、登録までか、実行までか。
  5. 3か月後に何を見て判断するかを決める。時間が減ったか、中断の回数が減ったか、締めが早まったか。

5番目が抜けている会社が多いのですが、ここが決まっていないと「なんとなく続ける」か「なんとなく戻す」になります。委託先を選ぶときの観点は経理代行サービスの選び方にまとめました。

シメゴの場合

当社は経理の領域を担当しているので、労務と総務については「先に出すべきです」とは申し上げません。むしろ、ご相談の内容を伺って「それは経理ではなく労務の問題です」とお伝えすることがあります。月末が潰れている原因が勤怠の締めにある場合、経理を出しても解決しないからです。

無料コスト診断では、いまバックオフィスで何にどれだけ時間がかかっているかを領域ごとに分けて、どこから出すと最も中断が減るかをお出ししています。3領域まとめてのご相談でも、まず1つに絞る形でご提案することが多いです。

まとめ

バックオフィスの外注は、3領域を同時に出すと窓口だけが3倍になります。判断の量・情報が渡せる形か・止まったときの影響・担い手の自由度という4つの物差しで並べると、一般には「経理 → 労務 → 総務」の順が最も詰まりにくくなります。

経理の中でも記帳から始め、支払は作成と実行を分ける。労務は給与計算だけを先に切り出し、手続きは社会保険労務士の領域として分けて考える。総務は外注の前に1か月の棚卸しをして、廃止とシステム化で消える項目を先に落とす。

順番の目的は、早く楽になることではなく1つ目を成功させて2つ目の合意を取れる状態を作ることです。1つ目でつまずいた会社は、2年間その話題に戻れなくなります。急いでいるときほど、出す範囲を1つに絞ってください。

いまのバックオフィスは、どこから出すのが効きますか。

経理・労務・総務のどこに時間が落ちているかを領域ごとに分けて、出す順番と概算をお出しします。「今は出すべきではありません」という結論もそのままお伝えします。

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※本記事は一般的な実務の整理であり、個別の会計処理・税務上の取扱いについて結論を保証するものではありません。記載した委託範囲の区分は当社が実務で見てきた一般的な設計の整理であり、特定の事業者の契約内容を示すものではありません。税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士法第2条第1項に定める税理士の業務であり、当社では行いません。労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成・提出代行は社会保険労務士の業務であり、当社では行いません。労働者派遣に該当する形での役務提供は行っておりません。