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経理業務の効率化|手をつける順番と、やってはいけない効率化

経理業務の効率化|手をつける順番と、やってはいけない効率化

この記事の要点

  • 経理業務の効率化は、やめる、型にする、自動化する、外に出すの順で進めると、無駄な投資をせずに済みます。
  • ツールは決まっている手順を速くする道具です。要らない作業を先に捨て、手順を決めてから入れます。
  • 効果は作業時間、締めまでの日数、差し戻し件数の3つで測ります。時間が集中している上位3つが、最初の投資先です。
目次
  1. 経理業務を効率化するメリットは、時間・ミス・数字の早さに出る
  2. 効率化がうまくいかない、3つの理由
  3. 効率化には順番がある
  4. ステップ1:やめる
  5. ステップ2:型にする
  6. ステップ3:自動化する
  7. ステップ4:外に出す
  8. 効果は「時間」で測る
  9. やってはいけない効率化
  10. 経理業務の効率化のよくある質問
  11. シメゴの考え方:型を作り、処理を引き取る
  12. まとめ

「経理を効率化したい」と相談をいただくとき、多くの会社が最初にやろうとするのはツール選びです。クラウド会計を入れる、経費精算アプリを比較する、OCRを試す。気持ちはよく分かります。ただ、この順番では、思ったほど楽になりません。

理由はシンプルで、今やっている仕事の中身を整理しないままツールを乗せると、無駄も一緒に自動化されるからです。要らない集計表を、より速く作れるようになるだけ。私自身、システム導入の現場でこの失敗を見てきました。

この記事では、経理業務の効率化を「やめる → 型にする → 自動化する → 外に出す」という順番で整理します。何をどう減らすか、効果はどう測るか、そして踏んではいけない地雷まで、中小企業の目線で書きます。そもそも経理にどんな仕事があるのかを先に押さえたい方は、経理業務の一覧から読むと分かりやすいはずです。

経理業務を効率化するメリットは、時間・ミス・数字の早さに出る

手入力や転記が減ると、作業時間と人件費が減ります。転記ミスも、照合のやり直しも減ります。月次の締めが早まれば、前月の結果を見て今月の手を打てるようになります。

ただし、費用はかかります。ソフトの利用料、データを移す手間、新しい操作に慣れるまでの時間です。この費用に見合う効果が出るかどうかは、どこから手をつけるかで変わります。

効率化がうまくいかない、3つの理由

成果が出ないケースには、共通のパターンがあります。

1. 道具から入っている

ツールは「決まっている手順」を速くする道具です。手順が決まっていない仕事にツールを入れても、使い方の判断がその都度発生するため、かえって手間が増えることすらあります。

2. 全部を一度に変えようとする

記帳も経費精算も請求も給与も、まとめて刷新しようとすると、現場が持ちません。経理は毎月止められない仕事です。回しながら変えるという制約を無視した計画は、途中で頓挫します。

3. 属人化を放置したまま道具だけ変える

手順が担当者の頭の中にしかない状態でツールを入れると、「その人にしか使えないツール」が一つ増えるだけです。効率化の前に、まず手順を人から引き剥がす必要があります。

効率化には順番がある

私が現場で使っている順番は、次の4段です。上から順にやると、下の段の効果が大きくなります。

順番やること狙いコスト
① やめる要らない作業・帳票を捨てる作業量そのものを減らすゼロ
② 型にする手順・ルール・締め日を決める判断の回数を減らすほぼゼロ(時間だけ)
③ 自動化するツール・連携で手入力を消す作業時間を減らすソフト費用
④ 外に出す残った処理を外部に任せる社内の時間を空ける外注費

①②を飛ばして③から始めたくなりますが、順番を逆にすると、費用をかけた割に効果が薄くなる。ここが最大の分かれ目です。

効率化は、やめる・型にする・自動化する・外に出すの順に積む

効率化の4段を階段で示す。①やめるは要らない作業・帳票を捨てて作業量そのものを減らし、コストはゼロ。②型にするは手順・ルール・締め日を決めて判断の回数を減らし、コストはほぼゼロ(時間だけ)。③自動化するはツール・連携で手入力を消して作業時間を減らし、コストはソフト費用。④外に出すは残った処理を外部に任せて社内の時間を空け、コストは外注費。①②を飛ばして③から始めると、費用をかけた割に効果が薄くなる。

やめると型にするは、ほとんど費用がかからない。この2段を先に済ませるほど、自動化と外注の効果が大きくなる。

図1 効率化の4段と、段ごとの狙いとコスト。

業務改善でよく使われる「ECRS(イクルス)」も、①②と重なる考え方です。なくせないか(Eliminate)、まとめられないか(Combine)、入れ替えられないか(Rearrange)、簡単にできないか(Simplify)の順に見直します。

「経理DX」という言葉で語られるのも、多くはこの③の段の話です。ただ、①②を飛ばしてソフトを入れ替えても、月次が出る日は変わりません。ツールを選ぶ前に決めておく順番(日数を測る→データの入り口を変える→例外を切り分ける→締めのカレンダーを引き直す)は経理DXは、どこから手を付けると止まらないかに分けて書きました。

ステップ1:やめる

効果が大きいのに、見落とされやすい段です。まず、「この作業、誰が何に使っているか」を1つずつ確認してください。答えられない作業は、やめる候補です。

  • 誰も見ていない帳票:昔の担当者が作り始めて、惰性で続いている月次資料
  • 紙とデータの二重管理:スキャンして保存しているのに、紙もファイリングしている
  • 月中の細かい集計:月末に締めれば分かるのに、週次で仮集計している
  • 過剰な分類:勘定科目や補助科目を細かく分けすぎて、入力に迷いが出ている
  • 形だけの二重チェック:全件を2人で見ているが、何を見るかが決まっていない

やめる判断が難しいときは、「3ヶ月止めてみて、誰かが困るか」で試すのが早いです。困らなければ、それは無くていい仕事でした。

やめる作業は、2つの問いで決める

誰も見ていない帳票、紙とデータの二重管理、月中の細かい集計、過剰な分類、形だけの二重チェックが、やめる候補になりやすい。1つずつ、この作業を誰が何に使っているかを確認し、答えられなければやめる候補にする。次に3ヶ月止めてみて誰かが困るかを試し、困らなければ無くていい仕事と判断する。

誰が何に使っているか答えられず、3ヶ月止めても誰も困らない作業は、無くていい仕事。

図2 やめる候補を見つける2つの問い。

なお、この段でつまずくのは「やめる候補が思い浮かばない」ときです。無駄な作業は、やっている本人からはいちばん見えません。1か月ぶんの作業を並べてから条件で判定する手順は経理の無駄な作業の見つけ方に書きました。

ステップ2:型にする

次に、残った仕事の手順を紙に落とします。ここが自動化と外注の土台になります。決めるべきものは、だいたい次の4つです。

決めること具体例効果
証憑の集め方領収書は撮影して共有フォルダへ、締切は毎月3営業日資料待ちの停滞が消える
勘定科目のルール迷いやすい費用の振り分け表を1枚作る判断と差し戻しが減る
締めのスケジュールいつ誰が何を終わらせるかを日付で固定月次が予定通りに終わる
チェックの範囲全件でなく、金額の大きい取引と例外だけを見る確認の時間が縮む

とくに効くのが締めのスケジュールです。経理が遅れる原因は処理の速さだけでなく、資料が揃わないことにもあります。締切を決めて社内に周知するだけで、月次の速度は目に見えて変わります。具体的な組み方は月次決算のやり方にまとめています。

型にするのは、証憑・勘定科目・締め・チェックの4つ

型にする段で決めるのは4つ。証憑の集め方(例:領収書は撮影して共有フォルダへ、締切は毎月3営業日)で資料待ちの停滞が消える。勘定科目のルール(例:迷いやすい費用の振り分け表を1枚作る)で判断と差し戻しが減る。締めのスケジュール(例:いつ誰が何を終わらせるかを日付で固定)で月次が予定通りに終わり、とくに効く。チェックの範囲(例:全件でなく、金額の大きい取引と例外だけを見る)で確認の時間が縮む。この型の上に、自動化と外注が載る。

手順が決まって初めて、ツールも外注先も動ける。4つのうち、とくに効くのは締めのスケジュール。

図3 型にする4つと、その上に載る自動化と外注。

ステップ3:自動化する

手順が決まって初めて、ツールが効きます。中小企業で費用対効果が出やすいのは、「手入力を消す」系の自動化です。

  • 銀行・カードのデータ連携:明細を自動取り込みし、繰り返し取引には仕訳ルールを設定する
  • 請求書の発行:定期請求をテンプレート化し、毎月の作り直しをやめる
  • 経費精算:スマホ撮影で申請、承認、会計への反映までを一本の流れにする
  • 証憑の保存:電子帳簿保存法の要件に合う形で、探せる状態で残す
  • キャッシュレス化:小口現金をやめ、法人カードや立替精算に寄せる(進め方は小口現金の廃止の手順)

証憑の保存では、メールやWebで受け取った請求書などの電子取引データを、紙に印刷した後も消さずに保存する必要があります(2024年1月から。国税庁「令和6年1月からの電子取引データの保存方法」)。ツールを比べるときは、先に2点を確かめます。今の会計ソフトや銀行とつながるか、自社の承認の流れと締め日に合わせられるかです。分類ごとに何が減って何が残るかは経理の効率化ツールを入れる順番で整理しています。

注意したいのは、自動化してもゼロにはならないという点です。連携は「たたき台を作ってくれる」もので、例外の判断や照合は残ります。AIを含めた自動化がどこまで届くのかは、AIによる経理事務の自動化で、できること・できないことを分けて整理しました。

自動化の目的は、人を減らすことではなく「判断に使える時間を作ること」です。入力に追われている状態から抜けると、同じ人員のまま、数字を見る余裕が生まれます。

ステップ4:外に出す

①〜③をやってなお時間が足りないなら、残った処理を外に出す段階です。線引きの基本は、「集める・記帳する・合わせる・まとめる」は出せる、「承認する・判断する」は社内に残す。判断の要らない定型作業ほど、外に出したときの効果が大きくなります。

集める・記帳する・合わせる・まとめるは外に出し、承認と判断は社内に残す

①〜③をやってなお時間が足りないときに、残った処理を外に出す。集める・記帳する・合わせる・まとめるは判断の要らない定型作業として外に出せる。承認する・判断するは社内に残す。

判断の要らない定型作業ほど、外に出したときの効果が大きい。

図4 外に出せる作業と、社内に残す作業の線引き。

逆に言えば、①②を飛ばして外注すると、外注先も手順が分からず動けません。型にする作業は、外注の前提条件でもあります。出し方と移行の手順は経理の外注で詳しく書いています。

効果は「時間」で測る

効率化を続けるコツは、効果を数字で見えるようにすることです。感覚で「楽になった気がする」では、次の一手が決まりません。私が最初に置く指標は3つです。

指標測り方見えるもの
作業時間主要な作業ごとに、月の合計時間を記録するどこに時間が集中しているか
締めまでの日数月末から試算表が出るまでの営業日数数字が経営に届く速さ
差し戻し件数申請や仕訳の修正・やり直しの回数ルールの曖昧さがどこにあるか

まずは1ヶ月、ざっくりでいいので記録してみてください。時間が集中している上位3つが、効率化の投資先です。そこ以外に手をつけても、体感は変わりにくいです。

やってはいけない効率化

速くすること自体が目的になると、危ない方向に進みます。次の3つは、短期的に時間が浮いても、後で高くつきます。

承認の手順を飛ばす

支払いの承認や、金額の大きい取引のチェックを省くと、誤りや不正のリスクが上がります。お金が動く手前の確認は、削る対象ではありません。減らすなら、確認の「範囲」を絞る形にします。

証憑を残さない

後から「なぜこの処理をしたのか」を説明できない状態は、決算や税務調査の場面で困ります。保存の方法は変えていいですが、残すこと自体は変えられません。

一人に集約して速くする

詳しい人がまとめて処理すると、その月は速く終わります。ただし、それは効率化ではなく属人化の進行です。その人が抜けた瞬間に、経理は止まります。

時間が浮いても、後で高くつく効率化が3つある

承認の手順を飛ばすと誤りや不正のリスクが上がるので、減らすなら確認の範囲を絞る。証憑を残さないと、なぜこの処理をしたのかを決算や税務調査で説明できないので、保存の方法は変えても残すこと自体は変えない。一人に集約して速くすると属人化が進み、その人が抜けた瞬間に経理が止まるので、効率化の前に手順を人から引き剥がす。

承認と証憑は削る対象ではない。一人に集めて速くするのは、効率化ではなく属人化の進行。

図5 やってはいけない効率化3つと、代わりにやること。

経理業務の効率化のよくある質問

取引の少ない会社でも、クラウド会計に替える意味はありますか

銀行やカードの明細を取り込めるだけでも、通帳を見ながらの手入力は減ります。ただ、証憑の集め方と締め日が決まっていないうちは、資料待ちで締めが遅れる状態が残ります。先に手順を決め、そのあとでソフトを選びます。

シメゴの考え方:型を作り、処理を引き取る

シメゴは、経理のうち日次の処理と月次の締めまでを代行しています。ただ、いきなり作業を引き取ることはしません。ご契約後に最初に行うのは、いまの経理の棚卸しと、やめられる作業の切り分けです。無駄を含んだまま引き取っても、費用が増えるだけだからです。

そのうえで、証憑の集め方・締めのスケジュール・チェックの範囲を型にして、クラウド会計での記帳から残高照合、月次レポートまでを担います。目安として月次を5営業日で締める運用を前提にしていますが(取引量や資料の到着状況により前後します)、狙いは速さそのものではなく、社長が処理から解放され、判断に時間を使える状態を作ることです。承認と支払いの実行は社内に残していただき、決算・税務申告は税理士の領域として顧問税理士と連携します。

まとめ

経理業務の効率化は、やめる → 型にする → 自動化する → 外に出すの順で進めると、無駄な投資をせずに済みます。ツールから入りたくなりますが、先に捨てて、先に手順を決める。この2段を踏んでいるかどうかで、同じツールを入れても結果が変わります。

まずは1ヶ月、経理の作業を「誰が・何に・何分」で記録してみてください。上位3つが見えたら、そこが最初の一手です。「どこまで自社でやって、どこから外に出すか」を一緒に整理したい方は、無料コスト診断からお声がけください。

記帳〜月次レポートを月5万円から。処理は任せて、判断に集中を。

いまの経理、どこを減らせて、どこを外に出せるか一緒に見てみませんか。

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浅香 祐輔

この記事を書いた人

浅香 祐輔(Never Red株式会社 代表取締役)

大手コンサルティングファーム(アクセンチュア/アビーム)出身。専門は経営管理改革とSAP財務会計(FI)。直近はSAP導入プロジェクトのPMとして、50名超のチームを率い、経理部門約30名のメンバーをまとめました。経理代行「シメゴ」を設計・運営しています。

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