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経理の無駄な作業は、どうやって見つけるか|「やめていい」と判断できる3つの条件

キーワード: 経理 無駄な作業 | シメゴ(運営: Never Red株式会社)

「経理に無駄な作業が多いと思うんです」というご相談を受けたとき、私が最初にお願いしているのは、その場で例を挙げないでくださいということです。

意地悪で言っているのではありません。この質問に即答できる会社は、たいてい答えが1つか2つしか出てきません。「小口現金がまだある」「押印のために出社している」。そこで話が止まってしまう。そして実際に手を動かしてみると、いちばん時間を食っていた作業は、誰も名前を挙げなかったものだった、ということが起きます。

無駄な作業は、やっている本人からは見えません。毎月やっているものは、その人の中では「経理の仕事」として定義されているからです。無駄かどうかは記憶で判断できるものではなく、条件に当てはめて機械的に判定するものだと考えています。

この記事では、経理の中から「やめていい作業」を見つける手順と、やめてよいと判断できる3つの条件を書きます。見つけた後にどの順番で手をつけるかは経理業務の効率化に、ツールで解くべき部分は経理の効率化ツールに整理しました。ここでは、その手前の「そもそも要らない作業をどう特定するか」だけを扱います。

1|なぜ「無駄はどこですか」と聞いても出てこないのか

現場に聞いても無駄が出てこない理由は、3つあります。どれも担当者の能力とは関係がありません。

理由1|引き継いだ作業には、理由が付いていない

経理の作業の多くは、前任者から引き継がれたものです。そして引き継ぎで渡るのは手順であって、なぜその作業が始まったかという理由は、ほぼ渡りません。理由が分からない作業は、やめる判断ができません。だから続きます。

「昔、社長が見たいと言ったから」始まった資料が、社長が見なくなって3年たっても毎月作られている。これは実務でよく見ます。引き継ぎで抜け落ちるものについては経理の引き継ぎに書きました。

理由2|「時間がかかる作業」と「無駄な作業」を混同している

この2つは別物です。時間がかかっていても必要な作業はありますし、5分で終わるのに完全に不要な作業もあります。

そして無駄な作業ほど短いことが多い。1回3分の転記が、月に60回あれば3時間です。ところが本人の体感では「すぐ終わるもの」として記憶されるので、無駄の候補として挙がってきません。

理由3|自分の仕事を否定することになる

これがいちばん大きいと思っています。「その作業は要らないですね」と言われることは、その時間を使ってきた自分への評価に聞こえます。だから聞き方を変えないと本音は出ません。

私が使っているのは、「この作業がなくなったら、誰が困りますか」という聞き方です。人ではなく作業に焦点が当たるので、答えやすくなります。困る人の名前が出てこない作業が、次の章の候補になります。

2|まず、1か月ぶんの作業を「行」にする

条件を当てはめるには、判定する対象が並んでいないと始まりません。棚卸しといっても大がかりなものは要りません。1か月、次の4列だけを記録します。

書くこと粒度の目安
作業名やったことを動詞で書く(「◯◯を△△に転記」)1行=1つの動詞。「月次処理」のような塊にしない
頻度日次/週次/月次/年次、および月あたりの回数回数まで書く。3分×60回が見えるようにする
1回の所要分単位。厳密でなくてよい5分刻みで十分。合計の桁が合えばよい
出力先その作業の結果を、次に誰が何に使うか★ここが最重要。人名かシステム名で書く

4列目の「出力先」を必ず入れてください。これが3つの条件のうち最も強力な判定材料になります。作業名だけを並べた一覧は、経理でよくある業務分類(経理業務の一覧)にきれいに収まってしまい、無駄が浮かび上がりません。

1か月ぶんで、たいていの会社は60〜120行になります。そのうち上位10行で総時間の半分前後を占めます。まず並べる。判定は並べてからでよいという順番を守ってください。頭の中で「これは無駄だな」と選別しながら書くと、結局いつもの2つしか残りません。

3|やめていいと判断できる3つの条件

並んだ行に対して、次の3つのどれかに当てはまるかを見ます。1つでも当てはまれば「やめる候補」です。当てはまらないものは、やめるのではなく減らす対象(後述)になります。

条件1|出力先が無い、または出力先が使っていない

作った結果を、次に誰も使っていない作業です。判定は簡単で、出力先の欄に人名かシステム名が書けなかった行がこれに当たります。

実務でよく見つかるのは次のようなものです。

迷ったときの確認方法は1つです。翌月から出さずに黙っていて、催促が来るかどうかを見る。2か月連続で誰からも何も言われなかった資料は、その時点で条件1に確定です。実際、この方法で消えるものが最も多い。

条件2|同じ情報を、二重以上に作っている

同じ数字が、社内の2か所以上で別々に入力・管理されている状態です。経理は転記の仕事が多いので、ここは必ず出てきます。

よくある型を挙げます。

二重になっている場所典型的な発生理由片方を止める向き
会計ソフトと、売掛管理のExcel会計側では取引先ごとの残高が見づらかった会計側の補助科目を設計し直してExcelを止める
経費精算システムと、経費の集計表導入時に「念のため」で並走させた並走の期限を決めていないだけ。集計表を止める
請求書の発行台帳と、入金消込の一覧担当が分かれていて、それぞれが自分用に作った1つを正にして、もう一方は参照に変える
紙の押印簿と、ワークフロー上の承認履歴電子化のときに紙を残す判断をした紙を止める。ただし後述の縛りを先に確認する

二重の厄介なところは、どちらも「正しい」ので、どちらも消しにくいことです。ここは正の側を1つ決める作業になります。判断の基準は「入力の起点に近いのはどちらか」。起点に近いほうを正にすると、下流は自動的に減ります。売掛の管理をどこで持つかは売掛金管理、入金の照合は入金消込に具体的に書きました。

並走を始めた時点で終了日を決めていないのが、二重が居座る最大の理由です。ツールを入れるときは止める側と、止める日を同時に決めてください経理の効率化ツール)。

条件3|例外のために、全件を手作業でやっている

3つ目がいちばん見つけにくく、いちばん時間を食っています。ごく一部の例外を拾うために、全件を人が見ているという形です。

典型例を並べます。

この作業は、担当者に聞いても無駄とは言われません。事実として例外は見つかっているからです。しかし判定の観点は「その例外は、全件を見なくても拾えないか」です。

実務では、次のどちらかに置き換えられることがほとんどです。

  1. 条件で絞る。金額が一定額以上、科目が特定のもの、取引先が新規、前月比の乖離が大きいもの。この4つの切り口で、見なければならない対象がかなり落ちる会社が多いです。
  2. 入口で止める。後で直すのではなく、そもそも間違った形で入ってこないようにする。申請フォームの選択肢を絞る、規程で使える手段を限定する、といった手当てです。

1のほうが早く効き、2のほうが根が深いところに効きます。まず1で対象を絞り、残った例外の発生源を2で潰す、という順番が現実的です。仕訳の確認をどこまで人が持つかという線引きはAI経理でどこまで自動化できるかにも書きました。

4|やめる前に確認する、3つの縛り

3条件に当てはまっても、そのまま消していいとは限りません。次の3つは、やめる前に必ず確認してください。ここを飛ばして消してしまうと、後から復旧できないものがあります。

縛り1|法令で保存が求められているもの

帳簿書類には法令上の保存義務があります。法人税法では帳簿書類の保存期間が原則7年とされ、青色申告法人が欠損金の繰越控除を受ける事業年度については10年(平成30年4月1日以後に開始する事業年度)とされています。会社法上の会計帳簿および事業に関する重要な資料は10年です。

ここで区別してほしいのは、「保存が要る」ことと「その形で作り続けることが要る」ことは別だという点です。保存義務がかかるのは帳簿書類そのものであって、それを月次で集計し直した社内資料まで同じ義務がかかるわけではありません。電子で保存する場合の要件は電子帳簿保存法への対応に整理しています。個別の適用については顧問税理士にご確認ください。

縛り2|監査・税務調査・金融機関の説明に使うもの

ふだんは誰も見ないが、年に1回だけ効くものがあります。金融機関に出す試算表の内訳、税務調査で聞かれる残高の根拠、監査での証跡。

これらは条件1(出力先が無い)に見えてしまうのが厄介です。出力先の欄に「年1回・銀行」「調査時・税理士」と書けるなら、それは出力先が有ると判定してください。判定を月次の頻度だけでやると、ここを誤って落とします。

縛り3|取引先や社内規程で約束しているもの

契約書や取引基本契約で、報告や様式が決まっている場合があります。社内規程で定めた承認手続きも同様です。これらは「やめる」のではなく、規程を直してからやめるという順番になります。順番を逆にすると、規程違反の状態が残ります。

5|やめられないものは、3つの軸で減らす

3条件に当てはまらず、縛りもある作業は残ります。この場合は消すのではなく、次の3軸で軽くします。ゼロにできないものを半分にするほうが、実務では効くことが多いです。

やること効き方
頻度を落とす日次→週次、週次→月次にできないかを見る回数が半分になれば時間も半分。最も確実
粒度を粗くする1円単位の照合を、閾値以上だけにする条件3の考え方の応用。対象件数が減る
担い手を変える経理でなくても成立する部分を、発生部署か外部に移す経理の時間は空くが、総量は減らない点に注意

3つ目は、社内の別部署に押し付ける形になると長続きしません。移す先にそのほうが早く終わる理由があるかを確認してください。たとえば領収書の内容確認は、使った本人が申請時に入力するほうが正確で速い。これは押し付けではなく起点の移動です(経費精算代行)。

頻度を落とす判断で迷ったときは、年間の山を先に見ておくと決めやすくなります(経理の年間スケジュール)。月次の負荷だけを見て頻度を決めると、決算期に無理が出ます。

6|やめた作業が「戻ってくる」のを防ぐ

やめたはずの作業が、半年後に復活していることがあります。原因はだいたい次の2つです。

1つ目は、やめた記録が残っていないこと。担当が変わったときに「これ、やらなくていいんでしたっけ」と聞かれ、誰も理由を説明できず、念のため再開する。手順書に手順だけを書いて、やめた判断を書いていないと、こうなります。手順書に何を書くべきかは経理マニュアルの作り方に書きました。要点は、手順ではなく判断の理由を残すことです。

2つ目は、置き換え先を作らずにやめたこと。小口現金がいちばん分かりやすい例です。立替の精算手段を用意しないまま廃止すると、社員が困って現金を持ち出す形に戻ります(小口現金の廃止)。

したがって、やめると決めた行には次の3つを1行で残してください。

  1. いつ、誰の判断でやめたか。
  2. どの条件に当てはまったからやめたか。(出力先が無い/二重/全件を見ていた)
  3. やめたことで発生する穴を、何で埋めたか。埋めていない場合は「埋めていない」と書く。

3つ目を正直に書いておくと、後で問題が起きたときに原因の特定が早く済みます。工程のつなぎ目で止まる話は経理業務フローの作り方にまとめました。

7|1か月の棚卸しから、実際に出てくる傾向

数字を盛るつもりはないので、断定はしません。ただ、ご相談を受けて棚卸しをした会社で共通して見られる傾向として、次の3つは申し上げられます。

属人化している会社では、そもそも棚卸し自体が特定の1人にしかできません。その場合は先に属人化の解き方を見てください(経理の属人化)。締めが遅い原因が経理の外にあるケースも多くあります(月次締めの早期化)。

シメゴの場合

当社にご相談いただくとき、「この作業を代行してほしい」という形でご依頼をいただくことがあります。ただ、お話を伺って「その作業自体が要らないのではないか」とお伝えすることがあります。要らない作業を外注しても、費用が発生するだけで社内の中断は減らないからです。

無料コスト診断では、いま経理で発生している作業を先ほどの4列の形に並べ直して、やめる候補・減らす候補・出す候補の3つに仕分けた状態でお返ししています。仕分けた結果、外注の対象がご相談時より小さくなることもあります。その場合はその範囲でお見積りします。どこまで任せられるかの一般的な線引きは経理を丸投げできる範囲に書きました。

まとめ

経理の無駄な作業は、記憶から探しても出てきません。1か月ぶんを4列(作業名・頻度・1回の所要・出力先)で並べてから、条件に当てはめて判定するのが確実です。

やめてよいと判断できる条件は3つ。出力先が無い/同じ情報を二重に作っている/例外のために全件を手作業で見ている。1つでも当てはまれば候補になります。ただし、法令上の保存義務、年1回だけ効く用途、契約や規程での約束という3つの縛りだけは、消す前に必ず確認してください。

そして、やめた作業にはやめた理由と、埋めた穴を1行で残す。ここを省くと、半年後に同じ作業が理由不明のまま復活します。無駄を見つける作業は一度きりではなく、翌年また同じ4列を書けるようにしておくことが本当の成果だと考えています。

その作業、そもそも要りますか。

いまの経理業務を「やめる・減らす・出す」の3つに仕分けて、概算とあわせてお返しします。「外注しなくていい範囲です」という結論もそのままお伝えします。

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※本記事は一般的な実務の整理であり、個別の会計処理・税務上の取扱いについて結論を保証するものではありません。帳簿書類の保存期間その他の法令上の要件は、事業年度・申告の種類・書類の性質により異なります。個別の適用可否は顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士法第2条第1項に定める税理士の業務であり、当社では行いません。労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成・提出代行は社会保険労務士の業務であり、当社では行いません。労働者派遣に該当する形での役務提供は行っておりません。