経理事務の代行|「入力だけ」を出したときに社内に残る手間

この記事の要点
- 経理事務の代行で外に出るのは、契約に書かれていなければ、会計ソフトへ入力する工程だけです。
- 入力の前後にある5つの工程は社内に残り、5つの手間として、作業時間よりも中断の形で効きます。
- 入力だけ、判断まで、照合までのどこで切るかを選べます。切る位置で、社内に残る手間が変わります。
目次
経理の事務作業を代行に出そうとするとき、最初に確かめたいのは「その事務作業は、どこからどこまでを指しているか」です。
確かめる理由は、経理事務の代行という言葉で外に出ていくのが、契約に書かれていなければ、いちばん最後の入力工程だけだからです。そして入力は、経理の一連の流れのなかで最も判断が少ない工程でもあります。
外に出したのが入力だけで、その前後の作業が社内に残ったままだと、頼んだあとに「思ったほど楽になっていない」と感じることになります。
この記事では、入力だけを外に出したときに社内へ何が残るのかを工程ごとに分解します。あわせて、残った手間が単純な作業時間ではなく「中断」として効いてくる理由と、どこで切れば負担が実際に減るのかを書きます。
なお、そもそも経理にどんな作業があるのかの全体像は経理業務の一覧に、丸ごと任せる場合の境界線は経理の丸投げ|任せられる範囲・費用・会社に残る3つの判断に分けて書きました。ここでは「入力だけを出した場合」という一点だけを扱います。
1|経理の作業を工程で並べると、入力は最後の1つでしかない
月次の経理を、実際の順番どおりに並べると次のようになります。会社の規模や業種で細部は変わりますが、順番はほとんど変わりません。
| 順 | 工程 | やっていること | 誰がやれるか |
|---|---|---|---|
| 1 | 集める | 通帳・カード明細・請求書・領収書・立替精算を月分として集める | 社内。取引の当事者に依頼が要る |
| 2 | 揃える | 抜けを確認し、読める形(PDF・CSV・Excel)にする | 社内。または追加費用で委託先 |
| 3 | 決める | 勘定科目・税区分・部門・補助科目を判断する | 判断材料があれば委託先。無ければ社内 |
| 4 | 入れる | 会計ソフトに登録する | 委託先。ここが「事務代行」で出る部分 |
| 5 | 合わせる | 残高照合、前月比較、明らかな異常の確認 | 契約次第。範囲に入っているかを確かめる |
| 6 | 使う | 出てきた数字を見て、必要なら手を打つ | 社内。ここは外に出せない |
「経理事務の代行」という言葉が指しているのは、この表の4だけであることがあります。見積書に「記帳入力業務」「仕訳入力代行」と書かれていれば、それは4です。1・2・3・5・6は、明記されていない限り社内に残ります。
ここで問題になるのは、依頼する側が「経理を外に出した」と認識するのに対し、実際に減ったのは6工程のうち1工程だという食い違いです。しかも減った1工程は、経理の担当者が「作業らしい作業」として自覚していた部分でもあります。自覚していた仕事が消えて、自覚していなかった仕事だけが残る。だから、減った実感より残った負担のほうが目立ちます。
図1 経理の6つの工程と、入力だけの代行が受け持つ範囲
- 1集める社内に残る
- 2揃える社内に残る
- 3決める社内に残る
- 4入れる代行が受け持つ
- 5合わせる社内に残る
- 6使う社内に残る
入力だけの代行が受け持つのは4の「入れる」だけで、前後の5つの工程は社内に残る。
仕訳代行(入力だけの代行)で頼める範囲
前の表の4「入れる」だけを受け持つサービスは、仕訳代行、仕訳入力代行、記帳入力といった名前で案内されています。頼めるのは、会社が渡した資料をもとに、仕訳を会計ソフトへ登録する作業です。
仕訳代行の範囲に入るかどうかが契約で分かれるのは、次の3つです。
- 3「決める」を含むか。勘定科目や税区分を委託先が判断するのか、会社が指定したとおりに入力するのか。
- 分からない取引をどう扱うか。会社に質問して待つのか、仮の科目で先へ進むのか。
- 5「合わせる」を含むか。預金の残高を通帳と照合するところまで入っているか。
見積書は、工程の番号で読む
見積書の業務の欄を、1〜6のどの工程に当たるかで読み直すと、頼める範囲と社内に残る範囲がそのまま分かります。
仕訳代行と記帳代行は同じか
仕訳代行と記帳代行は、どちらも証憑から仕訳を起こして会計ソフトへ入力する作業を指して使われます。名前だけでは範囲は決まりません。同じ記帳代行という名前でも、科目の判断を含むか、試算表まで出すか、残高の照合を含むかは契約ごとに違います。
比べるときは、名前をそろえるより、工程をそろえます。記帳代行で頼める範囲は記帳代行サービスとは|会社が依頼できる範囲・料金・依頼先の選び方に、料金の決まり方は記帳代行の相場と料金表|仕訳数・証憑の形・締めの回数で決まるに、請求や支払まで含む経理代行との線引きは経理代行と記帳代行の違い|頼める範囲・料金・向いている会社にまとめています。
仕訳代行に渡す資料
仕訳代行に渡す資料は、取引の事実が分かるものと、判断の材料になるものの2種類です。
- 取引の事実が分かるもの。通帳の明細、クレジットカードの利用明細、発行した請求書、受け取った請求書、領収書、立替精算の記録。
- 判断の材料になるもの。勘定科目の一覧、前月末の残高、部門や補助科目の決めごと、何の支払かが分かるメモ。
1つめだけを渡すと、委託先は科目を推測するか、質問を返すしかありません。2つめを先に渡しておくと、質問の往復が減ります。資料を集めて渡せる形にする作業そのものは、仕訳代行を頼んでも社内に残ります。次の節の手間1です。
2|入力だけを出したときに社内へ残る5つの手間
工程の話を、実際に社内で発生する作業に置き換えます。次の5つは、入力だけを委託した場合に社内に残ります。
図2 入力だけを出したときに社内に残る5つの手間
5つとも、資料や事実を持っているのが社内の人なので、入力を出しても社内に残る。
手間1|証憑を集めて、渡せる形にする
経理の外にいる人の協力が要る作業です。営業担当が持っている領収書、現場が受け取った請求書、社長のカード明細。これらを月末に集めるのは、経理の作業ではなく社内調整の作業です。督促の回数がそのまま所要時間になります。
委託先が「所定の形式で提出」を条件にしている場合は、整える作業も加わります。紙をスキャンする、Excelの様式に転記する、ファイル名を規則どおりに付ける。この整える作業は、入力を外に出したことで新しく発生した仕事です。渡す相手ができたことで、それまで曖昧に済ませていた形が固定されるためです。
手間2|不明点の質問に答える
入力を受けている側は、判断材料を持っていません。「7月18日の38,500円は何の支出ですか」「この入金は誰への請求分ですか」という質問が来ます。
回答するには、社内の誰かに聞き直す必要があります。1件の質問に対して、社内で1往復、委託先と1往復。件数ではなく往復の回数が時間を食います。この構造は記帳代行が「格安」でできる仕組みでも触れました。質問を月に1回へまとめる契約では、1回あたりの負担が重くなります。
手間3|出てきた数字を確認する
入力が終わって試算表が出てきます。それが合っているかを確認するのは、契約に照合が含まれていなければ会社側の仕事です。
ここで避けたいのが、確認しないまま使ってしまうことです。外に出した安心感から、出てきた数字をそのまま経営会議や金融機関への提出に回してしまう。入力自体が正確でも、渡した資料が抜けていれば数字は当然合いません。そして抜けに気づけるのは、渡した側だけです。
手間4|自社のルールを維持する
勘定科目の使い分け、部門の切り方、補助科目の粒度。これは会社ごとの決めごとで、委託先は初月に教わったとおりに踏襲します。
つまりルールが変わったとき、伝えるのは会社側の責任です。新しい事業を始めた、部門を分けた、補助金を受けた。伝え忘れると、気づいた月までさかのぼって直すことになります。判断のルールを文書にしておく方法は経理マニュアルの作り方に書きました。
このうち補助金は、伝える中身がふだんのルール変更と違います。交付決定の日より前に発注していないか、どの口座からどう払ったか、どの支払が補助事業のものか。払ったあとに経理では直せないものが混ざるため、支払が起きる前に会社が決めておく必要があります。決めておくルールと委託先に渡すものは補助金を受けた会社の経理は、何を残しておけばよいか|実績報告で困らない支払の形と、外に出すときに渡すルールに整理しました。
手間5|期限を守らせる管理
入力が終わる日は、証憑を渡した日で決まります。渡すのが遅れれば、そのぶん試算表は遅れます。締めの期限を守る責任は、外に出しても社内に残ります。
金融機関に月次を提出している会社では、遅れがそのまま提出の遅れになります。締めを早めるときに動かすべき場所は月次締めの早期化に整理しました。
3|残る手間は「時間」ではなく「中断」として効く
ここが、依頼する前と後で感覚がずれる理由です。
入力を外に出すと、まとまった作業時間は確かに減ります。入力にかけていた時間は、そのままなくなります。ところが残った作業は、性質がまったく違います。証憑の督促、質問への回答、ルールの伝達。これらは短くて、いつ来るか読めず、他人を巻き込むという共通点を持っています。
| 外に出た作業(入力) | 社内に残る作業(前後) | |
|---|---|---|
| 1回あたり | 長い(まとまった時間) | 短い |
| 発生タイミング | 決まっている(月初など) | 読めない(相手の都合) |
| 他人の関与 | ひとりで完結する | 必ず誰かに聞く/頼む |
| 止まったときの影響 | 自分が遅れるだけ | 締め全体が止まる |
| 記録への残り方 | 残る(作業として認識される) | 残らない(雑務として消える) |
合計時間だけを見れば減っています。それでも「楽になっていない」と感じるのは、減ったのが集中できる時間で、残ったのが集中を切る時間だからです。担当者の実感としては、こちらのほうが重く出ます。
したがって、事務代行を検討するときに測るべきは「入力に何時間かかっているか」だけではありません。経理に関して、月に何回中断が発生しているかを並べて見る必要があります。工程ごとに時間を測る手順は経理業務の効率化に書きました。
4|工程のどこで切るかで、残る手間は変わる
入力だけを出すのが悪いわけではありません。切る位置を選べると知っておくと、判断が変わります。切り方は次の3つに分けられます。
| 切り方 | 外に出る工程 | 社内に残るもの | 向く会社 |
|---|---|---|---|
| A|入力だけ | 4(入れる) | 集める・揃える・決める・合わせる・使う | 整理する担当者が社内にいて、判断もできる会社 |
| B|入力+判断 | 3・4(決める・入れる) | 集める・揃える・合わせる・使う | 証憑は集まるが、科目の判断ができる人がいない会社 |
| C|受け取りから照合まで | 2〜5 | 集める(渡す)・使う | 経理の担当者が退職した/兼務で回らない会社 |
Aで足りるのは、整理と判断ができる人が社内に残っている場合です。この場合、入力という単純作業だけを外に出すのは合理的で、費用も最も抑えられます。
問題は、その人が辞めたことをきっかけに代行を検討しているケースです。この状況でAを選ぶと、辞めた人がやっていた1〜3と5が誰にも割り当てられないまま残ります。他の社員が片手間で引き継ぐと、本業と重なる月に止まります。引き継ぎで実際に渡っていないのは手順ではなく判断の理由だという話は経理の引き継ぎに書きました。
担当者の退職がきっかけなら、Aを選ぶ前に確かめる
辞めた人が持っていた1〜3と5を、誰が引き受けるか。ここが決まらないまま入力だけを出すと、入力の前後が空いたままになります。
逆に、Cまで出せば社内に残るのは「渡す」と「使う」だけになります。費用は上がりますが、担当者の中断は大きく減ります。費用の差と、中断の差を並べて比べます。範囲ごとの費用感は経理代行の料金相場を参照してください。
自社の経理にいまどれだけの時間と費用がかかっているかは、シメゴの無料の経理コスト診断で整理できます。
5|切り出すときに決めておく4項目
どの切り方を選ぶ場合でも、契約前に次の4つを文字にしておくと、後から揉めません。見積書に書かれていなければ、契約の前に確かめる項目です。
- 証憑を渡す期限と手段。「毎月◯日までに、どの形式で、どこへ」まで決めます。ここが曖昧だと、遅れの責任が宙に浮きます。
- 判断できない取引の扱い。質問して待つのか、仮勘定に入れて先へ進むのか。後者を選ぶ場合、決算前に残高が積み上がることを織り込んでおきます(仮払金の精算)。
- 照合をどちらがやるか。残高照合と前月比較が範囲に入っているかどうか。入っていなければ、社内で見る人を決めます。
- 質問の来る頻度と経路。都度なのか月1回なのか、誰宛に来るのか。担当者が不在のときの代理も決めておきます。
4項目とも、契約の前に聞けば答えが返ってくる内容です。聞かないまま始めると、あとになって「そこは範囲外です」という会話になります。選定時に見るべき点の全体は経理代行の比較と選び方|料金表を並べる前にそろえる7つの条件に整理しています。
6|入力だけの代行が正しい選択になる会社
ここまで残る手間を書いてきましたが、Aの切り方が最適な会社は実際にあります。次の条件が揃っているなら、入力だけを出すのが費用対効果として最も良い形です。
- 証憑が自然に集まる仕組みがある。経費精算がシステム化されている、請求書が電子で届く、現金払いがほとんどない。
- 科目の判断ができる人が社内にいて、当面辞めない。判断は外に出しにくい部分なので、ここが社内にあるのは強みです。
- 試算表を見て違和感に気づける人がいる。照合を外していても、最後に人の目が入ります。
- 取引のパターンが安定している。毎月ほぼ同じ相手・同じ科目なら、伝達の手間が小さく済みます。
- 単純に件数が多い。件数が多いほど入力工程の比率が上がるので、外に出した効果がそのまま出ます。
最後の条件は重要です。入力だけの代行がいちばん効くのは、件数が多くて判断が単純な会社です。ECのように定型の売上が並ぶ会社や、毎月同じ取引先へ同じ内容の請求が立つ会社が典型例です。逆に、件数は少ないのに1件ごとの判断が重い会社では、入力を外に出しても体感がほとんど変わりません。
シメゴの場合
シメゴは、入力だけを切り出す代行ではありません。ライト(月5万円)・スタンダード(月10万円)・フル(月15万円)の3つのプランすべてに、記帳と月次レポートが入っています。料金は税別の月額です。領収書・通帳・請求書をお預かりして仕訳まで代行し、月初から5営業日で締めて月次レポートを納品します。4の切り方でいえば、Cに近い範囲です。
このため、6の5条件がそろっていて入力だけで足りる会社には、当社の範囲は広すぎることがあります。反対に、経理担当者の退職をきっかけに検討している会社は、辞めた人がやっていた仕事の大半が入力以外にあるので、入力だけを切り出す形は合いません。1〜3と5を誰が持つかを先に並べてから、範囲を決めます。
会計ソフトは freee とマネーフォワードに対応しています。税務申告と税務相談は当社では行わず、提携税理士が担当します。無料の経理コスト診断では、いまの経理にかかっている時間と費用を整理します。
まとめ
経理事務の代行という言葉で外に出るのは、契約に書かれていなければ「入れる」工程だけです。その前にある「集める」「揃える」「決める」、後ろにある「合わせる」「使う」は、契約に明記されていなければ社内に残ります。
残った作業は、合計時間としては小さくても、短くて・読めなくて・他人を巻き込むという性質を持つため、担当者の実感としては重く出ます。「外に出したのに楽になっていない」という感覚は、ここから来ています。
判断するときは、入力に何時間かかっているかだけでなく、経理に関して月に何回中断しているかを数えてください。そのうえで、入力だけ(A)/判断まで(B)/照合まで(C)のどこで切るかを選ぶ。切る位置を選べると分かっているだけで、契約の中身は変わります。
この記事のまとめ
- 入力だけの代行(仕訳代行)が受け持つのは、6つの工程のうち「入れる」の1つ。前後の5つの工程は社内に残る。
- 社内に残る5つの手間は、時間よりも中断として効く。
- 入力だけ(A)、判断まで(B)、照合まで(C)のどこで切るかを、契約の前に決める。
よくある質問
- 仕訳代行と記帳代行は同じですか
どちらも、証憑から仕訳を起こして会計ソフトへ入力する作業を指して使われます。名前だけでは範囲は決まりません。科目の判断、試算表の作成、残高の照合が入っているかを、契約の業務の欄で確かめます。
- 経理事務の代行を頼むと、社内には何が残りますか
入力だけを頼んだ場合は、証憑を集めて渡すこと、質問に答えること、出てきた数字を確認すること、自社のルールを伝えること、期限を管理することの5つが残ります。判断や照合まで頼むと、残る範囲は狭くなります。
- 入力だけの代行が向くのは、どんな会社ですか
証憑が自然に集まり、科目を判断できる人と試算表を見られる人が社内にいて、取引のパターンが安定している会社です。件数が多く、1件ごとの判断が単純な会社ほど、入力を外に出した効果が出ます。
※本記事は、記載時点での一般的な整理であり、個別の事案について会計処理・税務上の判断を示すものではありません。委託範囲の区分は一般的な整理で、特定の事業者の契約内容を示すものではありません。当社では税務代理・税務書類の作成・税務相談は行いません。税務の取扱いは、顧問税理士にご確認ください。
