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経理のシェアードサービス|グループ会社が複数ある会社の、集約の順番

キーワード: 経理 シェアードサービス | シメゴ(運営: Never Red株式会社)

グループ会社が3社、5社と増えてきた会社から、同じ相談を受けます。「各社に経理担当が1人ずついる。全員が同じことをやっている。1か所にまとめられないか」。

結論から申し上げると、まとめられます。ただしまとめ方を決める前に、寄せる順番を決めないと戻ります。私が見てきた失敗は、ほぼ例外なく「箱を先に作って、業務を一斉に流し込んだ」ものでした。新会社を設立し、各社から人を異動させ、4月1日から全社分の経理を開始する。その3か月後、各社に「連絡担当」という名の実質的な経理担当が復活しています。

この記事では、組織の作り方ではなくどの業務から、どの順番で寄せるかを扱います。順番さえ合っていれば、箱は最後に決めても間に合います。

1|シェアードサービスは「組織」ではなく「同じ処理を1回にすること」

まず言葉の整理から。経理のシェアードサービスとは、グループ内の各社がそれぞれ持っていた経理業務を1か所に集め、同じ処理を各社分まとめて1回で回す仕組みのことです。集める先が親会社の一部門なのか、専用の会社(いわゆるSSC)なのか、外部の委託先なのかは、この定義の外側にあります。

ここを分けて考えないと、議論が最初から組織論になります。実際には次のように整理できます。

誰が処理するか指揮命令向いている状況
シェアードサービス(社内型)グループ内の人員自社(グループ)内各社に経理経験者がいて、集めれば人数が足りる
シェアードサービス(別会社型)専用会社の社員その会社グループの規模が大きく、費用配賦をきちんと分けたい
外部委託(BPO・経理代行)外部の事業者委託先(委託元は指示できない)集めても人数が足りない。採用が続かない

3つ目だけ性質が違うのは、指揮命令ができない点です。業務委託である以上、日々の作業指示は出せません。ここを曖昧にしたまま外に出すと契約上の問題になります。契約の型と責任の所在は経理を委託するに、外部化の全体像は経理BPOとはに書きました。

そして重要なのは、この3つは択一ではないということです。実務では「支払と経費精算は外に出し、記帳と月次は社内に寄せる」という組み方をよく採ります。工程ごとに置き場所が違ってよい、と考えたほうが現実的です。

2|寄せる順番は「重要度」ではなく「会社ごとの差が小さい順」

ここが本題です。集約の順番を決める基準は、業務の重要度でも、作業量でもありません。グループ各社の間で、やり方の差がいちばん小さい工程から寄せます

理由は単純で、差が大きい工程を先に寄せると、集約先で「A社のやり方」「B社のやり方」を全部覚える羽目になり、1か所に集めたのに1回で回らないからです。人が集まっただけで、処理は3社分のまま残ります。

差の小さい順に並べると、おおむねこうなります。

工程会社ごとの差寄せるときの注意
1支払(振込データの作成まで)小さい。振込という行為自体はどの会社も同じ承認と実行は各社に残す。ここは寄せない
2経費精算のチェック小さい。規程の金額が違うだけ先に各社の旅費規程の差分を一覧にする
3請求書の発行・入金消込中。締め日と請求書の様式が分かれている締め日を揃えられるかを先に確認
4記帳・月次締め中。勘定科目と部門の切り方が各社バラバラ科目マスタの統合が前提。ここが本番
5給与計算大きい。手当・勤務体系・労使協定が会社ごとに違う最後でよい。無理に寄せない選択もある
6決算・税務申告大きい。会社ごとに顧問税理士が別のことも多い集約の対象にせず、窓口だけ一本化する手もある

この順で進めると、1と2は3か月ほどで形になります。逆に4から手をつけると、科目の統合協議が半年続いて、その間なにも変わりません。最初の成果が出るまでの期間が長いほど、社内の推進力は落ちます。1と2で「たしかに減った」を作ってから、4の重い交渉に入るのが現実的です。

支払を最初に寄せても、お金は動かさない

順番1に支払を置いていますが、寄せるのは振込データを作るところまでです。承認と実行は各社に残します。集約先が全社の資金を動かせる状態は、事故が起きたときに範囲の特定ができなくなるうえ、社内の牽制も効きません。この線引きは外部委託でも社内集約でも同じで、支払代行とはに詳しく書きました。

3|箱より先に揃えるのは、この4つ

集約の準備で本当に時間がかかるのは、組織図でもシステム選定でもありません。次の4つです。ここが揃っていないと、何を寄せても1回では回りません。

揃えるもの揃っていないと起きること妥協案
勘定科目・補助科目同じ支出が会社ごとに違う科目に入り、グループで足せない全科目を統一せず、上位の集計区分だけ共通にする
締め日と提出期限集約先の繁忙が月末に3回来る。人員が読めない締め日は各社のまま、集約先への提出期限だけ揃える
承認のルール(誰がいくらまで)集約先が「これは承認済みか」を毎回各社に聞く。往復が増える金額基準を統一できないなら、承認者の一覧だけ台帳にする
証憑の形(紙かデータか、どこに置くか)1社だけ紙が残り、その1社のためにスキャン作業が発生する先にその1社だけを電子化する。全社一斉より早い

4つ目は電子帳簿保存法の要件とも絡みます。集約すると保存場所が変わるため、検索要件を満たす形のまま移せるかを先に確認してください。この論点は電子帳簿保存法への対応に整理しています。

妥協案の列を作ったのには理由があります。4つを完全に統一しようとすると、集約は永久に始まりません。統一は目的ではなく手段です。「グループで足せる」「集約先が迷わない」の2つが満たせるなら、各社の違いは残してかまいません。

システムを1つにするのは、最後でよい

「まず会計システムを統一しよう」と始まった案件は、たいてい2年目に入ります。システムの統合は、移行するデータの範囲、過去分の扱い、各社の運用の作り直しが同時に発生する、独立した大仕事だからです。

先に業務を寄せて、集約先が全社のシステムに触る状態を作れば、統一しなくても処理は1か所で回ります。統一の判断は、集約が回り始めてから、実際に手間になっている箇所を見て決めるほうが安く済みます。ツール導入の順番については経理の効率化ツールにも書きました。

4|集約しないものを、先に決める

集約の設計で抜けやすいのが、寄せないものを明示することです。ここが曖昧だと、各社の担当者は「自分の仕事が全部無くなるのか」と身構え、協力が得られません。

実務上、集約先に寄せないほうがよいのは次のあたりです。

この4つを先に「各社に残す」と宣言してしまうと、集約の話が驚くほど進みます。取り上げられるのではなく、手数のかかる作業だけ引き取られる、という理解になるからです。

5|つまずくのは、たいていこの3つ

人が動かない

いちばん多いのがこれです。各社の経理担当を集約先に異動させる前提で計画を組むと、勤務地・処遇・所属会社の変更が発生し、そこで止まります。異動を前提にしない設計にできるかが分岐点です。実務では、各社の担当者は所属のまま残し、集約先には新しく人を置く(または外部に出す)形にすると、計画が動きます。人員が確保できない場合の考え方は経理の人手不足に書きました。

グループ間の取引価格を決めていない

別会社型でシェアードサービス会社を作る場合、その会社が各社から受け取る業務委託料をいくらにするか、という論点が必ず発生します。ここは税務上の取扱いが絡むため、価格の決め方は顧問税理士に確認してください。役務提供の対価が適正かどうか、国外の関係会社が含まれるかどうかで論点が変わります。当社ではこの部分の判断は行わず、税理士の先生と並走する形をとっています。

社内型(親会社の一部門)であれば、この論点は配賦の話に収まります。組織の形を選ぶ段階で、この差は考慮に入れておく価値があります。

集約したのに、各社に「連絡担当」が残る

冒頭に書いた失敗の正体がこれです。原因はほぼ1つで、集約先が判断できる範囲を決めていないことです。判断できないと、集約先は毎回各社に確認します。確認を受ける人が各社に必要になり、その人が実質的な経理担当として残ります。

手を打つなら、業務ではなく判断を渡してください。「この科目に迷ったら集約先が決めてよい」「金額◯万円までの費用計上は集約先の判断でよい」という線を、最初に文書にします。渡っていないのが手順ではなく判断基準であることは、社内の引き継ぎでも同じ構造です(経理の引き継ぎ)。

6|そもそも集約すべきか、を先に確かめる

正直に申し上げると、グループ会社が2〜3社で、各社の経理担当が兼務1名ずつという規模なら、シェアードサービスの箱を作る意味は薄いと考えています。集約の効果は、同じ処理が何十件も並んだときに初めて出るものだからです。件数が少ないうちは、箱の維持費のほうが上回ります。

その規模なら、選択肢は2つです。

逆に、集約の効果が出やすいのは会社数が増える予定がある場合です。M&Aや分社で今後も会社が増えるなら、1社増えるたびに経理担当を1人採る構造から先に抜けておく価値があります。この場合、判断基準は現在のコストではなく「次の1社が増えたときに何が起きるか」です。

なお、その「次の1社」がこれから新しく作る子会社で、まだ人も取引も付いていない段階なら、寄せる話より先に決めることがあります。設立1年目に限れば、選択肢は親会社の経理が見る・子会社に人を置く・最初から外に出すの3つで、判断を分けるのは取引の件数ではなく型の数です。その並べ方は子会社を新しく作ったとき、経理は最初から外に出すか|親会社が見る・人を置く・外に出すの3択を、設立1年目で決めるに書きました。

なお、寄せる先やグループの親会社が海外にある場合は、集約の順番より先に、本国への月次報告と日本の帳簿のどちらを正本として持つかを決める必要があります。報告の締切が日本の月次より早く、概算と確定の線引きが要るためです。その決め方は外資系の日本法人は、経理をどこまで外に出せるか|本国への月次報告と日本の帳簿を、同じ委託先に持たせるかどうかに書きました。

シメゴの場合

当社では、グループ複数社のご依頼を1つの契約でお受けし、会社ごとに担当を分けずに横断で処理する形をとっています。別会社を作らずに集約の効果だけ取りにいく形、と考えていただくと近いです。

そのうえで、3点を先にお伝えしています。

まとめ

経理のシェアードサービスで決めることは、組織の形ではありません。会社ごとの差が小さい工程から寄せること。箱より先に、科目・締め日・承認・証憑の4つを揃えること(完全統一は狙わない)。寄せないものを先に宣言すること。集約先に業務ではなく判断を渡すこと。この4つです。

そして、会社数が少ないうちは箱を作らないほうが安く済みます。集約は目的ではなく、会社が増えても人を増やさずに済む構造を作るための手段です。

無料コスト診断では、グループ各社の業務の並びを拝見して、どの工程から寄せられるか、いまの規模で箱を作るべきかまで含めてお返ししています。

グループ何社分の経理を、どの順番で寄せられるか。

各社の業務を工程ごとに並べ、寄せられるもの・各社に残すものを仕分けしてご説明します。「まだ集約しないほうがよい」という結論もそのままお伝えします。

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※本記事は一般的な実務の整理であり、個別の組織設計・会計処理・税務上の取扱いについて結論を保証するものではありません。グループ会社間の業務委託料その他の取引価格の設定、および連結・組織再編に関する会計税務上の取扱いについては、顧問税理士等の専門家にご確認ください。税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士法第2条第1項に定める税理士の業務であり、当社では行いません。労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成・提出代行は社会保険労務士の業務であり、当社では行いません。労働者派遣に該当する形での役務提供は行っておりません。