経理の人手不足|採用が決まらない会社が、まずやるべき3つのこと
「経理の求人を半年出しているのに、応募がほとんど来ない」。ここ1年で、この相談が明らかに増えました。しかも困っているのは、業績が悪い会社ではありません。売上が伸びていて、取引が増えて、処理が追いつかなくなった会社ほど深刻です。
ただ、話を伺っていくと、多くの場合で問題は「人数が足りないこと」そのものではありませんでした。特定の一人にしかできない仕事が積み上がっていて、その人の時間が上限になっている。そこに人を足そうとしても、教える時間が取れないので、また同じ人に戻る。この構造が本体です。
この記事では、経理で人が採れない理由を整理したうえで、採用が決まる前でも今日から動かせる打ち手を、順番つきで書きます。私自身が経理・会計システムの現場で見てきた失敗も、あわせて共有します。
なぜ、経理だけ人が決まらないのか
営業や事務は決まるのに経理だけ決まらない、という会社には共通点があります。
1. 求人票が「何でも屋」になっている
「経理業務全般」「幅広くお任せします」と書かれた求人は、応募者から見ると仕事の範囲が読めない求人です。日次の仕訳が中心なのか、月次を締めるところまでなのか、決算の資料づくりまで含むのか。求められる経験がまったく違うのに、同じ言葉でまとめられている。結果として、経験者は「自分の力量で務まるか判断できない」と感じ、応募を見送ります。
2. 経験者は、限られたイスの取り合いになっている
月次を一人で締められる人は、そもそも母数が多くありません。そして、そういう人はたいてい今の会社で必要とされていて、動きません。中小企業が同じ層を同じ条件で狙えば、決まらないのは自然な結果です。
3. 出社前提が、候補者をさらに絞っている
経理は在宅と相性が悪くない業務ですが、「紙が届くから出社」「通帳を見に行くから出社」という理由で出社必須にしている会社は少なくありません。この条件を付けた瞬間に、応募できる人は大きく減ります。紙の存在が、採用のハードルに直結しているという自覚は、意外と持たれていません。
人手不足の正体は、人数ではなく「集中」
私が最初に確認するのは、人数ではなくその仕事を誰が担っているかの分布です。たいてい、次のような症状が出ています。
| よく聞く症状 | 実際に起きていること | 効く手 |
|---|---|---|
| 月末月初だけ極端に忙しい | 資料の到着が遅く、締めの作業が数日に圧縮されている | 締めのスケジュールと締切を先に決める |
| 担当者が休むと止まる | 手順が本人の頭の中にあり、外から見えない | 手順を文書にして、作業を分割する |
| 人を増やしたのに楽にならない | 教える時間が取れず、簡単な作業しか渡せていない | 渡せる作業を先に切り出してから採用する |
| 社長が最後に確認している | 判断が必要な作業と、そうでない作業が混ざっている | 判断の要る仕事だけを社内に残す |
この表を見ると分かりますが、どの症状も「人が1人増えれば解決する」ものではありません。仕事の並べ方の問題です。ここを直さずに採用だけ進めると、入った人がすぐ辞める、という次の問題が起きます。
まずやるべき3つのこと
採用活動と並行して、順番どおりに進めてください。1と2を飛ばして3をやると、結局うまくいきません。
1. 誰が・何に・何時間使っているかを1ヶ月測る
細かい記録は要りません。作業を10個くらいに区切って、月の合計時間をざっくり書き出すだけで十分です。ほとんどの会社で、上位3つの作業が全体の半分以上を占めます。その3つが、対処すべき対象です。感覚で「経理が忙しい」と言っている限り、打ち手は決まりません。
2. 「判断が要る仕事」と「要らない仕事」に分ける
ここが最も重要な工程です。経理の仕事は、実は大半が判断を伴いません。
- 判断が要らない:領収書の整理、仕訳の入力、通帳との突合、請求書の作成と送付、経費の計上
- 判断が要る:支払いをするかどうかの承認、値引きや貸倒れの扱い、資金の配分、取引条件の決定
判断が要らない仕事は、社内の人でなくても回せます。逆に判断が要る仕事は、外に出してはいけません。この線が引けていない会社ほど、「経理は社内じゃないと無理」と考えがちです。
3. 判断が要らない仕事から、順に外に出す
切り出した作業のうち、量が多くて手順が決まっているものから外に出します。全部を一度に動かす必要はありません。まず記帳だけ、次に請求書の発行だけ、という進め方で十分です。経理は毎月止められない仕事なので、回しながら移すのが前提になります。
採用と外部化、どちらを選ぶか
どちらが正しいという話ではなく、性質が違います。比べる軸を揃えておくと判断しやすくなります。
| 観点 | 採用する | 外に出す |
|---|---|---|
| 戦力になるまで | 採用活動+引き継ぎで、数ヶ月かかることが多い | 手順が決まっていれば、比較的短期間で移せる |
| 費用の性質 | 給与・社会保険・採用費が固定的に発生する | 依頼する範囲と量に応じて変わる |
| 退職リスク | 担当者が抜けると、また同じ状態に戻る | 担当が替わっても手順が残る |
| 判断業務 | 任せられる(社内の意思決定に関われる) | 任せられない(承認は社内に残す) |
| 向いている会社 | 経理を軸に管理部門を育てたい会社 | 処理量は多いが、判断は社長・役員で足りる会社 |
実務的には、「判断が要らない処理は外に出し、判断が要る仕事に社内の人を充てる」という組み合わせが、中小企業では最も現実的です。詳しい比べ方は経理は採用と代行どちらが得かで整理しています。
やってはいけない対処
忙しいときほど、後で高くつく選択をしてしまいがちです。
詳しい人に、さらに寄せる
いちばん分かっている人にまとめて任せれば、その月は速く終わります。ただしそれは効率化ではなく属人化の進行です。その人が辞めた瞬間、会社の数字が止まります。人手不足の会社が最も踏みやすい地雷が、これです。
求人の条件だけを上げる
給与を上げても、仕事の範囲が読めない求人は応募が増えにくいままです。金額より先に、担当してもらう範囲を具体的に書くほうが効きます。「月次の締めまで。決算は税理士と連携」と書けるだけで、応募者の判断材料になります。
締めを遅らせて凌ぐ
月次の締めを翌々月にずらせば、その場はしのげます。ただ、そうやって出てきた数字は経営判断にはもう使えません。人手不足の本当のコストは、残業代ではなく、判断が遅れることのほうです。
シメゴの考え方:処理を引き取り、判断は社内に残す
シメゴは、経理のうち日次の処理と月次の締めまでを代行しています。いきなり作業を引き取ることはせず、最初に行うのは、いまの経理の棚卸しと、やめられる作業の切り分けです。無駄を含んだまま引き取っても、費用が増えるだけだからです。
そのうえで、証憑の集め方・締めのスケジュール・チェックの範囲を型にして、クラウド会計での記帳から残高照合、月次レポートまでを担います。目安として月次を5営業日で締める運用を前提にしていますが、取引量や資料の到着状況により前後します。支払いの承認と実行は社内に残していただき、決算・税務申告は税理士の領域として顧問税理士と連携します。ここを混ぜないことが、外に出しても事故が起きない条件です。
まとめ
経理の人手不足は、人数の問題に見えて、実際は「一人に集中している」構造の問題であることがほとんどです。だから、採用が決まるのを待つ前にできることがあります。
順番は、①1ヶ月測る → ②判断の要否で仕事を分ける → ③判断が要らないものから外に出す。この3つを終えてから採用に向かうと、求人票の中身も具体的になり、入った人が定着しやすくなります。
まずは、経理の作業を「誰が・何に・何分」で書き出してみてください。上位3つが見えたら、そこが最初の一手です。「どこまで社内に残して、どこから外に出すか」を一緒に整理したい方は、無料コスト診断からお声がけください。