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経理の外注は融資で不利になるか|金融機関に聞かれるのは、試算表の出どころと出てくる早さ

キーワード: 経理 外注 融資 銀行 | シメゴ(運営: Never Red株式会社)

経理を外に出すかどうかのご相談で、費用も範囲もひととおり決まったあとに、最後に出てくる質問があります。「外に出すと、銀行の印象が悪くなったりしませんか」。

借入がある会社、これから借りる予定がある会社の社長ほど、この質問をされます。経理を自社で抱えていないことが、管理が甘い会社だと受け取られないか。気持ちはよく分かります。

先に、当社の理解を書きます。外注しているかどうかで評価が決まる、という話ではないと考えています。問われるのは別のことで、私は次の3つに整理しています。

  1. 直近の数字が、いつ出てくるか。
  2. その数字の出どころを、社内の誰が説明できるか。
  3. 会社のお金と社長のお金が、分かれているか。

このうち外注で動くのは、1つ目と、記録の正確さの部分だけです。2つ目と3つ目は、外に出しても社内に残ります。この記事では、その線を引きます。

そのうえで、ひとつだけ最初にお断りしておきます。「経理を外に出せば審査に通りやすくなる」とは、当社は書きませんし、申し上げません。個々の金融機関の審査の基準は公表されておらず、当社はそれを知る立場にありません。ここで書くのは、公表されている資料と、当社が受託実務で見てきた範囲での整理です。

1|金融機関に何を求められているかは、公表資料に書いてある

審査の中身は公表されていませんが、中小企業と金融機関の双方が拠って立つ準則として公表されている資料があります。日本商工会議所と全国銀行協会が共同で設置した研究会が策定した「経営者保証に関するガイドライン」(平成25年12月策定・その後改定)です。経営者保証に依存しない融資を進めるために、会社の側に求められる経営状況として、次の3つが挙げられています。

このうち経理に直接関わるのは①と③です。③の本文は次のとおりです。

「主たる債務者は、資産負債の状況(経営者のものを含む。)、事業計画や業績見通し及びその進捗状況等に関する対象債権者からの情報開示の要請に対して、正確かつ丁寧に信頼性の高い情報を開示・説明することにより、経営の透明性を確保する。」(同ガイドライン 4.(1)③)

さらに、金融機関の側が経営者保証を求めない可能性を検討する際の要件として、「法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている」ことや、「法人から適時適切に財務情報等が提供されている」ことが並んでいます(同 4.(2))。

読み方として大事なのは、ここに「誰が帳簿をつけているか」は書かれていないことです。書かれているのは、正確であること、丁寧に説明できること、適時に出てくること、そして会社と経営者のお金が分かれていることです。なお、このガイドラインは経営者保証の扱いについての自主的な準則で、融資の審査基準そのものではありません。ここでは、金融機関とのやり取りで何が重く見られているかを知るための手がかりとして参照しています。

2|外注で動くもの、社内に残るもの

ガイドラインに出てくる要素を、外注したときにどうなるかで並べ直すと、次のようになります。

問われること外注で動くか中身
直近の数字が出る早さ動く記帳が日々回っていれば、月次の試算表が出る日は早くできる。ただし社内の資料待ちが残っていれば、外注しても遅いまま
記録の正確さ動く証憑との突き合わせ、預金残高の確認が毎月の工程に入る
会社と社長のお金の区分見えるようになるだけ社長への貸付や立替は、記録すれば残高として表に出る。分けるかどうかを決めて実行するのは社長
数字の背景の説明動かない「なぜ先月は売上が落ちたのか」に答えるのは社内の人
事業計画・業績見通し動かない見通しを立てて、変わったときに自分から伝えるのは経営者の仕事

表を見ていただくと分かるとおり、外注で良くなるのは「材料」の側です。材料が早く、正確に出てくるようになる。一方で、その材料を持って金融機関と話すのは、外注していてもしていなくても社長です。

3|翌月10日に出る会社と、45日かかる会社では、聞かれることが変わる

ここが、外注が融資の場面で実際に効くところだと私は考えています。

月次の試算表が翌月の中旬に出てくる会社は、面談の時点で先月までの数字を紙で持っていけます。すると、話は数字の中身に進みます。売上が落ちた月の理由、在庫が増えている理由、借りたお金を何に使ったか。答えにくい質問もありますが、少なくとも数字に基づいた会話になります。

試算表が出るまで45日かかる会社、あるいは決算の時期にまとめて記帳している会社は、そうはいきません。手元にあるのは前期の決算書だけで、「足元はどうですか」という質問に、口頭で答えることになります。「だいたい前年並みです」と答えても、裏付ける数字がその場にありません。

ガイドラインの言葉に戻ると、前者は「適時適切に」出せている状態、後者は出せていない状態です。違いは経理を誰がやっているかではなく、数字がいつ出てくるかにあります。そして、1人経理で決算前にまとめて記帳している会社にとっては、外注がこの差を詰める手段になり得ます。

ただし、何営業日で締めればよいかに一律の正解はありません。多くの中小企業は翌月8〜10営業日で困らない、というのが当社の見方です。締めを縮めるときに先に手を入れる場所は月次締めの早期化|1日縮めるために動かすのは、経理の外ですに書きました。外注しても、請求書や経費の提出が遅れていれば締めは早くなりません。

4|「この数字は誰が作っていますか」と聞かれたときに答えること

経理を外に出していると、面談で数字の作り手を聞かれることがあります。そのときに説明できるようにしておきたいのは、次の4点です。

  1. 記帳と月次の試算表を、どこが作っているか。委託先の名前と、委託している範囲。
  2. 会計ソフトは、誰の契約か。御社の契約で委託先が招待されて入っている形なら、帳簿は御社の手元にあると説明できます。
  3. 預金残高の確認を、毎月誰がしているか。通帳と試算表の残高が合っているかを見ている人。
  4. 決算と申告に、税理士がどう関わっているか。

4つ目については、正直に書いておくべきことがあります。ガイドラインは開示する情報の信頼性を高める方法として、「外部専門家による情報の検証を行い、その検証結果と合わせた開示が望ましい」としていて、ここでいう外部専門家は「公認会計士、税理士等」と定義されています(同 4.(1)①③)。

当社は税理士法人ではありません。経理代行会社が記帳していることは、この「外部専門家による検証」には当たらないと考えてください。記帳を外に出す場合でも、決算と申告で顧問税理士がどう関わっているかは、別に説明できるようにしておく必要があります。税理士と経理代行の役割の違いは税理士と経理代行の違いで整理しています。

5|外注したことで、かえって困る場面

外注が融資の場面で逆に働くこともあります。当社がお伝えしている3つを挙げます。

(1) 社内に、数字を説明できる人がいなくなる

いちばん多いのがこれです。試算表は毎月届く。けれど社内の誰も中身を読んでいない。面談で「この前払費用の増加は何ですか」と聞かれて、委託先に確認しますと答えるしかない。数字が正確でも、説明できなければ「丁寧に説明」はできません。この問題は経理アウトソーシングのデメリット|出したあとに社内で起きることを、隠さず書くでも、消えないデメリットのひとつとして書きました。

(2) 社長との貸し借りが、整理されないまま残る

記帳を外に出すと、社長が立て替えた経費や、会社から社長への貸付が、勘定科目の残高として毎月の試算表にそのまま載ります。記録されること自体は良いことです。ただ、それを整理しないまま何年も積み上げると、ガイドラインがいう「法人と経営者の関係の明確な区分・分離」とは逆の姿が、数字として毎月出てくることになります。仮払金として残っている場合の整理の仕方は仮払金の精算に書きました。

(3) 試算表と決算書の数字が、大きくずれる

月次の試算表では減価償却や賞与の引当を入れず、決算で一度に反映する運用にしていると、期中に見せた利益と決算書の利益が大きく違ってきます。期中に「好調です」と説明していた会社の決算が、思ったより悪い。これは外注に限った話ではありませんが、月次で何を入れて何を入れていないかを、社長が把握していないと起きやすくなります。

6|融資の話が出る前に、社内で決めておく3つ

外注するかどうかに関係なく、次の3つは今日から始められます。

  1. 毎月、試算表を社長が30分読む。全部を読む必要はありません。現預金、売上、粗利、借入の残高の4か所で足ります。見るべき場所は試算表の見方|月次でどこを見るか、決算書との違いをわかりやすく解説にまとめました。
  2. 資金繰り表を、3か月先まで持っておく。「借りたお金で何をして、いつ返せるのか」に答える材料は、試算表ではなく資金繰り表のほうにあります。作り方は資金繰り表の作り方|3ヶ月先の資金ショートを防ぐ手順とテンプレの考え方に書きました。
  3. 会社と社長のお金の出入りを、1枚の一覧にしておく。役員報酬、立替、会社からの貸付、社長からの借入。いまいくら残っていて、どう整理するつもりかを、自分の言葉で説明できる状態にしておきます。

この3つをやらずに外注だけしても、融資の場面ではほとんど何も変わりません。逆に、この3つが回っている会社にとっては、外注は数字を早く正確に出す手段として素直に効きます。

7|シメゴの場合と、正直に申し上げること

まとめ

経理を外注していること自体で、融資の場面の評価が決まるわけではない、というのが当社の理解です。公表されているガイドラインが会社に求めているのは、正確で信頼性の高い情報を丁寧に説明すること、適時に出すこと、会社と経営者のお金を分けることで、誰が帳簿をつけているかではありません。

外注で動くのは、数字が出る早さと、記録の正確さです。翌月の中旬に先月の試算表を持っていける会社は、数字に基づいた会話ができます。

一方で、数字の背景を説明すること、見通しを立てること、社長との貸し借りを整理することは、外に出しても社内に残ります。そして、経理代行が記帳していることは、ガイドラインのいう公認会計士・税理士等による検証には当たりません。

だから、外注を決める前でも後でも、社長が毎月試算表を読むこと、資金繰り表を3か月先まで持つこと、会社と社長のお金の一覧を作ること。この3つから始めてください。

いまの締めで、試算表が何日目に出ているかから見ます。

記帳のタイミング、資料が揃う日、試算表が出る日、預金残高を誰が確かめているかをうかがい、外に出して早くなる部分と、社内に残る部分を整理してお返しします。融資の可否の判断はいたしませんが、材料の出し方は一緒に組み立てます。

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※本記事は、記載時点で公表されている資料に基づく一般的な整理であり、融資の可否・条件その他の個別の金融機関の判断を示すものでも、保証するものでもありません。引用した記述は、経営者保証に関するガイドライン研究会「経営者保証に関するガイドライン」(平成25年12月策定・その後改定/全国銀行協会ウェブサイト掲載の本文)の 4.(1)①③ および 4.(2) からの引用です。同ガイドラインは経営者保証の取扱いに関する自主的自律的な準則であり、融資審査の基準を定めたものではありません。「翌月10日に出る会社と45日かかる会社で聞かれることが変わる」「多くの中小企業は翌月8〜10営業日で困らない」との記述は、当社の受託実務および導入相談で見てきた範囲に基づく見立てであり、統計調査に基づくものではありません。税務代理・税務書類の作成・税務相談、法的な判断は当社では行いません。