試算表の見方|月次でどこを見るか、決算書との違いをわかりやすく解説

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顧問税理士や経理担当から「試算表です」と一枚の表を渡されても、「決算書とどう違うのか」「これを見て何を判断すればいいのか」がよく分からない。そう感じている経営者は少なくありません。私も経理の現場で、月次の試算表を渡されるたびに黙って受け取り、ファイルに綴じるだけになっている社長を見てきました。
試算表は、決算を待たずに自分の会社の今を毎月つかむための道具です。見るべき場所さえ決まってしまえば、そこまで難しいものではありません。
試算表とは何か
試算表とは、日々の仕訳を集計した総勘定元帳の各勘定について、その残高や合計を一覧にまとめた表です。ひとことで言えば、決算書ができあがる手前の「途中経過の集計表」です。ふつうは月に一度、その月までの数字を締めて作成します。
もともとの目的は、記帳が正しく行われているかを確かめること。簿記では、ひとつの取引を必ず借方(左)と貸方(右)の両方に同じ金額で記録します(複式簿記)。だから全部を集計すると、理屈のうえでは左右の合計がぴったり一致するはずです。ここがずれていれば、どこかで記帳を間違えているサイン。試算表はまず、この「計算の検算」の役割を持っています。
ただ、経営者にとっての試算表の価値は、検算だけではありません。決算を待たずに、毎月の売上・利益・お金の状態が見えること。これが本当の使いどころです。
試算表と決算書は何が違うのか
試算表と決算書は、同じ会計の数字を扱いますが、役割がはっきり違います。ここを分けて理解すると、試算表の見方がぐっとクリアになります。
| 試算表 | 決算書 | |
|---|---|---|
| 作るタイミング | 毎月(月次) | 年に1回(事業年度末) |
| 位置づけ | 途中経過・速報値 | 確定した最終結果 |
| 主な使い道 | 社内の経営判断 | 税務申告・金融機関・株主など外部向け |
| 調整 | 決算整理はまだ入っていない | 減価償却・引当金などの整理を反映済み |
つまり、決算書が「確定した1年の答え合わせ」だとすれば、試算表は「毎月更新される途中経過」です。決算書の見方そのものについては決算書の見方の記事で詳しく整理していますが、経営のかじ取りに本当に効くのは、年に一度の決算書より、毎月手元に届く試算表のほうだと私は考えています。数字が新しいほど、打てる手も多いからです。
試算表の3つの種類
試算表と呼ばれるものには、大きく3種類あります。名前は似ていますが、見えている情報が少しずつ違います。実務でよく渡されるのは、いちばん下の合計残高試算表です。
| 種類 | 載っているもの | ひとことで |
|---|---|---|
| 合計試算表 | 各勘定の借方合計・貸方合計 | その月にいくら動いたか |
| 残高試算表 | 各勘定の差引残高 | 今いくら残っているか |
| 合計残高試算表 | 合計と残高の両方 | 動きと残高を一枚で |
経営者が普段見るなら、残高が分かるもので十分です。現預金がいくら残っているか、売掛金がどれだけ積み上がっているか。判断に使うのは「残高」だからです。合計(その月の動いた総額)は、内訳を細かく追いたいときに参照する、くらいの位置づけで構いません。
試算表は上半分が貸借対照表、下半分が損益計算書
残高試算表の勘定科目は、ふつう決算書の2つの表と同じ順に並びます。上のほうの資産・負債・純資産が貸借対照表にあたる部分、下のほうの収益・費用が損益計算書にあたる部分です。貸借対照表を資産・負債・純資産の3つに区分することは、会社計算規則で定められています(e-Gov法令検索「会社計算規則」第73条)。
| 区分 | 主な勘定科目 | 残高が出る側 | 読むときの問い |
|---|---|---|---|
| 資産 | 現金・預金、売掛金、商品、前払金 | 借方(左) | 手元にいくらあり、回収待ちがいくらあるか |
| 負債 | 買掛金、未払金、借入金、前受金 | 貸方(右) | これから払うお金、返すお金がいくらあるか |
| 純資産 | 資本金、繰越利益剰余金 | 貸方(右) | これまでの利益の積み上げがプラスか |
| 収益 | 売上高、受取利息 | 貸方(右) | 今期ここまでにいくら売れたか |
| 費用 | 売上原価、給料手当、地代家賃、支払利息 | 借方(左) | 何にいくら使ったか |
この並びが頭に入ると、借方・貸方の見方も決まります。資産と費用は借方に、負債・純資産・収益は貸方に残高が出るのがふつうです。本来と逆の側に残高が出ている科目は、記帳の誤りか処理漏れを疑います。現金の残高が貸方に出ている(手元の現金がマイナスになっている)、売掛金が貸方に出ている、といった行を見つけたら、数字を読み込む前に経理へ理由を確認してください。
下半分の損益計算書の部分からは、5つの段階の利益が読めます。この段階は、会社計算規則の第89条から第94条で定められています(e-Gov法令検索「会社計算規則」)。
| 利益 | 求め方 | 分かること |
|---|---|---|
| 売上総利益(粗利) | 売上高 − 売上原価 | 商品やサービスそのものでいくら稼いだか |
| 営業利益 | 売上総利益 − 販売費及び一般管理費 | 本業のもうけ |
| 経常利益 | 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用 | 借入金の利息なども含めた、ふだんの事業の成績 |
| 税引前当期純利益 | 経常利益 + 特別利益 − 特別損失 | 臨時の損益まで含めた、税金を払う前の利益 |
| 当期純利益 | 税引前当期純利益 − 法人税等 | 最終的に会社に残る利益 |
経営者が試算表で見るべき4か所
試算表は勘定科目がずらりと並ぶので、全部を追おうとすると疲れてしまいます。私が経営者にお伝えしているのは、まずこの4か所だけ見てくださいということです。
1. 現預金の残高
いちばん上の資産のブロックにある現金・預金の残高です。会社が今この瞬間、いくら手元に持っているか。利益が出ていても現金が薄ければ会社は回りません。試算表を開いたら、まずここに目をやる癖をつけてください。あわせて、先々の入出金は資金繰り表で確認すると、手元資金の見通しがつきます。
2. 売掛金と買掛金の膨らみ
売掛金(まだ回収していない売上)と買掛金(まだ払っていない仕入・経費)の残高も要チェックです。売上は伸びているのに売掛金だけが月を追って膨らんでいるなら、回収が遅れているサインかもしれません。ここは黒字なのに資金が苦しくなる、いわゆる「勘定合って銭足らず」の入口です。前月と比べて、不自然にふくらんでいないかを見ます。
3. 営業利益の途中経過
損益のブロックでは、売上や当期純利益よりもまず営業利益(本業のもうけ)を見ます。試算表は月次なので、これは「今期ここまでの本業の成績」を表します。年間の目標に対して、今の進み具合はどうか。粗利率(粗利÷売上)が前月から落ちていないか。金額だけでなく「率の動き」も追えると、値引きや原価上昇の兆しに早く気づけます。
4. 前月・前年との比較
最後に、いちばん大切なのが比較です。試算表の数字は、単月で眺めても「多いのか少ないのか」が分かりません。前月と並べる、前年の同じ月と並べる。そうして初めて、異変が浮かび上がります。多くの会計ソフトは月次推移や前年対比を表示できます。試算表は並べて初めて語りだすと覚えておいてください。
試算表を開いたら「現預金 → 売掛・買掛 → 営業利益 → 前月比」の順に目を走らせる。慣れれば、開いてすぐに会社の体温がつかめます。全科目を理解する必要はありません。
試算表の利益は「累計」と「決算整理前」を踏まえて読む
月次の試算表で利益を読むときは、決算書にはない注意点が2つあります。
損益の数字は、期首からの累計
残高試算表に載る売上や経費は、事業年度の初めからその月末までの合計です。期首が4月の会社なら、6月の試算表の営業利益は4月から6月までの3か月分になります。1か月ごとの動きを見たいときは、会計ソフトの月次推移表で月別の数字を並べてください。
決算整理前の利益は、月によって実態からずれる
減価償却費のように決算でまとめて計上することがある費用は、期の途中の試算表に入っていないため、そのぶん利益が実態より多く見えます。その差は決算月にまとめて表に出ます。賞与のように特定の月に集中して出ていく費用があると、支給月以外の利益は多めに、支給月の利益は大きく下がって見えます。どちらも年間の見込み額を12で割って毎月計上しておくと、期の途中の利益が決算の数字に近い形で見えるようになります。月末の在庫を数えて売上原価に反映しているかどうかでも、粗利は大きく変わります。毎月の締めで何をそろえるかは月次決算のやり方にまとめました。
試算表の見方のよくある質問
借方と貸方の合計が一致していれば、試算表は正しいですか
一致していても、誤りが残っていることはあります。科目を取り違えた仕訳や、同じ請求書の二重計上は、借方と貸方に同じ金額が入るので合計は一致したままです。仕訳そのものの入れ忘れも、両側とも入らないので一致は崩れません。貸借の一致は最低限の確認と考え、本来と逆の側に残高が出ている科目や、前月から急に動いた科目を見て確かめます。
純資産がマイナスになっているのは、どういう状態ですか
負債の合計が資産の合計を上回っている状態で、債務超過と呼ばれます。赤字が続き、繰越利益剰余金のマイナスが資本金などを上回ると、この形になります。月次の試算表で純資産がゼロに近づいてきたら、決算を待たずに資金繰りの見直しに着手し、顧問税理士にも相談してください。
試算表が「毎月」出てこないと意味がない
ここが、経理の現場から最もお伝えしたいところです。試算表の見方を覚えても、その試算表が2〜3ヶ月遅れで上がってくるのでは、速報値としての値打ちがほとんど失われてしまいます。3ヶ月前の売掛金の膨らみに今ごろ気づいても、打てる手は限られます。
ところが、この「毎月きちんと締める」がなかなか回りません。社長や兼務の担当者が本業の合間に記帳していると、月次はどうしても後回しになり、数字が固まるのが遅れます。試算表が遅れるほど、経営判断も遅れる。ここが、経理を自社で抱え続けるか外に出すかの分かれ目になります。
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まとめ
試算表は、決算を待たずに会社の今をつかむための、毎月の途中経過表です。決算書が年に一度の確定した答えなら、試算表は毎月更新される速報値。全科目を理解する必要はなく、現預金・売掛買掛・営業利益・前月比の4か所を順に見れば、自社の体温は十分につかめます。
そして、その価値がいちばん出るのは、試算表が毎月きちんと・早く締まっているときです。「見方は分かったけれど、うちは試算表が遅れて出てくる」と感じたら、まずは無料の経理コスト診断をお使いください。送信後1営業日以内に、概算見積もりと改善ポイントをメールでお返しします(面談はご希望の方のみ)。
