資金繰り表の作り方|3ヶ月先の資金ショートを防ぐ手順とテンプレの考え方
「利益は出ているのに、なぜか口座の残高が増えない」。中小企業の経営者と話していて、いちばん多い違和感がこれです。決算では黒字なのに、月末が近づくと通帳を何度も見てしまう。この不安の正体は、たいてい資金繰り表がないことにあります。
損益(もうけ)とお金の動きは、同じではありません。売上が立った月と、そのお金が入ってくる月はずれます。だから「利益」を見ていても、来月お金が足りるかどうかは分からない。それを見えるようにする道具が資金繰り表です。この記事では、資金繰り表の作り方を、損益計算書との違いから、実際に組み立てるステップ、3ヶ月先まで見通すコツ、そして「作っても続かない」本当の理由まで、経理の実務目線で整理します。
資金繰り表とは何か
資金繰り表は、ひとことで言えば「これから会社の口座にいくら入って、いくら出て、残高がいくらになるか」を月単位で並べた表です。過去を記録する決算書とは向きが逆で、これから先の現金の動きを予測するために使います。
損益計算書(PL)との違い
ここを混同すると、資金繰り表を作る意味が消えてしまいます。両者はそもそも見ているものが違います。
| 損益計算書(PL) | 資金繰り表 | |
|---|---|---|
| 見るもの | もうけ(利益) | 現金の残高 |
| 計上の基準 | 発生した時点(売上が立った月) | お金が動いた時点(入金・出金の月) |
| 向き | 過去の実績 | これから先の予測が中心 |
| 答える問い | 今期は儲かったか | 来月・再来月にお金は足りるか |
たとえば100万円の売上を今月計上しても、入金が翌々月なら、その2ヶ月間、口座のお金は増えません。その間に仕入や給与の支払いが来れば、黒字でも現金は減ります。これが「黒字なのに資金が苦しい」という状態の中身です。資金繰り表は、この時間差を可視化するために作ります。
資金繰り表の作り方(基本の4ブロック)
難しく考える必要はありません。資金繰り表は、たった4つのブロックの足し引きでできています。まずはExcelでも十分です。
期首残高(月はじめの口座残高)+入金ー出金=期末残高(月おわりの残高)。そして、その期末残高が翌月の期首残高になる。この連鎖を月ごとに横に並べていくだけです。
ステップ1:期首残高を入れる
いちばん左の月の「期首残高」に、いまの現預金の合計を入れます。ここは実額なので迷いません。複数口座があるなら合算します。ここが出発点になります。
ステップ2:入金予定を「入金日ベース」で並べる
ここが最大のポイントです。売上ではなく、実際にお金が入る月で書きます。得意先ごとに締め・支払サイトが違うので、「今月納品ぶんは翌月末入金」のように、入金のタイミングでずらして置きます。入金は主に次のような区分で分けると見やすくなります。
- 売掛金の回収(本業の入金)
- 借入による入金
- その他の入金(助成金、資産の売却など)
ステップ3:出金予定を並べる
出ていくお金を、性質ごとに分けて置きます。毎月ほぼ一定の固定費と、売上に応じて動く変動費を分けておくと、あとで予測を立て直すときに楽になります。
- 仕入・外注費(変動しやすい)
- 人件費・家賃・リース料(固定費)
- 借入の返済(元本+利息)
- 税金・社会保険(時期がまとまって重い)
とくに税金と賞与は、特定の月に大きく出ていきます。ここを忘れると予測が崩れるので、年間の支払カレンダーを先に埋めておくのが安全です。
ステップ4:期末残高を計算し、翌月へつなぐ
期首残高に入金を足し、出金を引けば、その月の期末残高が出ます。それを翌月の期首残高に転記して、同じ計算を横に伸ばしていく。こうして数ヶ月先の残高がマイナスに沈まないかを、先回りで確認できるようになります。
まずは「3ヶ月先」まで作る
いきなり1年ぶんを精緻に作ろうとすると、たいてい途中で挫折します。最初は直近3ヶ月に絞るのがおすすめです。3ヶ月あれば、資金がショートしそうな月を事前に見つけ、入金の前倒し交渉や、つなぎの借入を検討する時間が取れます。慣れてきたら6ヶ月、12ヶ月と伸ばしていけば十分です。
予測と実績を並べて精度を上げる
資金繰り表は、一度作って終わりではありません。翌月になったら、予測した数字の隣に、実際の入出金(実績)を入れて見比べます。ズレた理由をひとつずつ潰していくと、月を追うごとに予測の精度が上がっていきます。この「予実の突き合わせ」が、資金繰り表をただの表から使える道具に変える工程です。
資金繰り表が「続かない」本当の理由
作り方そのものは、ここまでの通りシンプルです。それでも続かない会社が多い。理由は表計算が難しいからではなく、そもそも月次の数字が締まっていないことにあります。
資金繰り表の入金・出金は、日々の記帳と請求・支払の管理があって初めて埋まります。記帳が2〜3ヶ月遅れていると、いまの残高すら正確に掴めず、予測の土台が崩れます。つまり資金繰り表の前提は、毎月、決まったタイミングで数字が上がってくる状態です。
ここが、経理を外に出すかどうかの分かれ目になります。社長や兼務担当が月末に慌てて入力している会社では、資金繰り表まで手が回りません。逆に、記帳から月次の締めまでが自動的に流れる仕組みができていれば、資金繰り表はその数字を並べ替えるだけで作れます。シメゴでは、AIで証憑などの下処理を行い、人が最終確認する進め方で、月次を安定して締める運用を組んでいます。数字が毎月そろっていれば、資金繰りの見通しも立てやすくなります。
まとめ
資金繰り表は、期首残高・入金・出金・期末残高という4つのブロックを、入出金のタイミングで月ごとに並べるだけのシンプルな道具です。ポイントは、売上ではなくお金が動く月で書くこと、そしてまず3ヶ月先まで作って予実を突き合わせること。この2つだけでも、資金の不安はぐっと具体的になります。
ただし、その大前提は「毎月の数字が締まっていること」です。もし記帳が遅れがちで、いまの残高すら心もとない——そう感じたら、まずは無料コスト診断で、現状の経理の手間と、月次を安定させる進め方を一緒に整理するところから始めてみてください。