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外資系の日本法人は、経理をどこまで外に出せるか|本国への月次報告と日本の帳簿を、同じ委託先に持たせるかどうか

キーワード: 外資系 日本法人 経理 アウトソーシング | シメゴ(運営: Never Red株式会社)

社員が数名から数十名の外資系日本法人の方から、こういうご相談をいただくことがあります。

このとき最初に決めるのは、委託先を何社にするかでも、料金でもありません。本国への報告と日本の帳簿のうち、どちらを「正本」として持ち、どちらをそこから作るのかです。ここが決まっていない状態で外に出すと、月末に必ず食い違いが出ます。

この記事では、外資系日本法人が経理を外に出すときに、出す前に決めておく事項と、同じ委託先に両方を持たせるかどうかの判断材料を整理します。移転価格や本国への支払にかかる源泉徴収といった税務の論点は扱いません。そちらは税理士の領域です。

1|「二つの帳簿」ではなく、「一つの帳簿と一つの報告」

相談の場で、よく「日本用と本国用で帳簿を二つ持っている」とうかがいます。実務としてそう見えているだけで、性質は違います。

日本の帳簿本国への月次報告
何に従うか日本の法令。日本に設立した法人である以上、帳簿書類の作成・保存と申告は日本の定めに従いますグループ内の決まり。様式も締切も、親会社が決めたもの
間違えたときに何が起きるか申告と税務調査に直結する本国の担当者から差し戻される。社内の問題として収まることが多い
直せるか直せるが、期ズレの修正は面倒翌月の報告で調整できることが多い

つまり、正本は日本の帳簿で、本国への報告はそこからの組み替えと置くのが、事故が少ない形です。逆に「本国のシステムに入れたものが正で、日本の帳簿は決算のときに作る」という回し方にすると、一年分の差異を決算期にまとめて解消することになり、そこで初めて金額が動きます。

外に出すときも同じです。委託先に渡すのは日本の帳簿の作成であって、そこから本国の様式に組み替える工程は、出すか出さないかを別に決めます。この2つを分けずに「経理を全部お願いします」と伝えると、見積の前提がずれます。相見積が横に並ばない理由は経理代行の相見積が横に並ばない理由|仕訳数・業務件数・人月、3社が別々のものを数えているにも書きました。

2|外に出す前に、この5つを紙に書き出す

ここが曖昧なまま委託を始めると、最初の1〜2か月は委託先からの質問対応で、かえって社内の手間が増えます。

決めること決まっていないと起きること
(1) 締め日が2つあるか
本国の報告締切と、日本の月次を固める日
報告締切に間に合わせるため概算で出し、あとで確定値と合わなくなる。どちらが「会社の数字」か社内で割れる
(2) 報告の通貨と、使う為替レート
期末日のレートか、月中平均か。誰が決めた値を使うか
月ごとに違うレートが混ざり、本国から差異の説明を求められる。説明できる人が社内にいなくなる
(3) 勘定科目の対応表
グループの科目コードと、日本の勘定科目の対応
委託先が日本の慣行で科目を振り、報告の段階で毎月手作業の振替が発生する。担当が替わると対応表ごと消える
(4) 会計基準の差で処理が変わる項目
グループ基準と日本の基準で扱いが違うもの
差異の一覧が誰の手元にもなく、決算で初めて表に出る
(5) 承認の経路
支払・発注を誰が承認するか。本国か、日本の代表か
委託先が作った支払データが、承認者不在で止まる。時差がある場合は1日ではなく1週間止まる

(3) の対応表は、外に出すかどうかにかかわらず会社に要るものです。いま社内の誰か1人の頭の中にしかないなら、その人が辞める前に紙にしてください。委託の話はそのあとで構いません。属人化をどこから崩すかは経理の属人化|手順書を作っても直らない理由と、崩す順番に整理しました。

(5) は見落とされやすい項目です。外に出しても、支払ってよいかを決める権限は委託先には渡りません。日本に承認者がおらず、本国の承認を待つ建て付けになっている会社は、外注の前に「日本側で誰がどこまで決めてよいか」を先に決める必要があります。振込の権限をどこまで渡すかは支払代行を入れる前に決めること|振込の権限を、どこまで渡すかに書きました。

3|同じ委託先に両方を持たせるか、分けるか

「日本の帳簿」と「本国への報告の作成」を、1社にまとめるか、分けるか。どちらが正解ということはなく、何を優先するかで決まります。

1社にまとめる分ける(帳簿は日本の代行、報告は社内または別の先)
向いている会社日本側に経理の分かる人がいない。報告様式が毎月ほぼ同じ報告様式や質問対応が本国とのやりとりを伴う。日本側に管理部門の担当が1人いる
強み帳簿と報告のつなぎ目が1社の中で閉じる。差異の説明を1か所に聞ける報告の中身を社内に残せる。委託先を替えるときの影響が帳簿側だけで済む
弱み受けられる先が限られる。替えるときに両方が同時に止まるつなぎ目が社内にできる。対応表と差異一覧を社内で維持する必要がある
本国から質問が来たとき委託先に確認してから回答する。時間はかかるが答えは揃う社内の担当が答える。数字の出どころを自分で辿れる状態が前提

当社は外注を受ける側なので割り引いて読んでいただきたいのですが、日本側に管理部門の担当が1人でもいるなら、報告の組み替えは社内に残したほうが後々の自由度が高いと考えています。報告は本国とのやりとりそのもので、数字の背景を説明する場面が必ず出てきます。そこを外に置くと、説明のたびに1往復増えます。

逆に、日本側が営業と技術だけで管理部門がゼロという会社では、分けたほうの選択肢は実際には機能しません。「社内に残す」の受け手がいないからです。外に出したあと社内に誰を残すかは経理を外に出したあと、社内に誰を残すか|窓口・承認・締めの3役を決めないと戻ってくるに書きました。

4|締め日が2つあると、どこで詰まるか

本国の報告締切が、日本の月次が固まる日より早い。これが外資系日本法人でいちばん多い詰まり方です。

概算と確定の線を、先に引く

報告締切に間に合わせるには、締切時点で分かっていない金額を概算で置くしかありません。問題は、どの項目を概算にしてよいかが決まっていないことです。毎月ちがう項目が概算になると、差異の説明が毎月ゼロからになります。

先に「この項目は概算でよい」「この項目は確定を待つ」を決め、概算にした項目は翌月に確定値で振り替える、という形にしておくと、説明が定型になります。どこを縮められるかの考え方は月次締めの早期化|1日縮めるために動かすのは、経理の外ですに書きました。タイトルのとおり、縮む場所は経理の中ではないことが多いです。

早くするために動かすのは、請求書が届く日

外資系日本法人でも、詰まる場所は同じです。取引先からの請求書が月初の数日に届く、社員の経費精算が締切を過ぎてから出てくる、本国からのグループ内請求が遅れて届く。この3つを動かさずに経理の作業だけ早くしても、1日も縮みません。

特に3つ目のグループ内請求は、日本側からは動かしにくい項目です。ここは「毎月◯日までに届かなければ概算で置き、翌月に振り替える」と先に決めて、本国とも合意しておくほうが現実的です。

5|英語は、どこで必要になるか

「英語ができる経理代行でないと無理ですか」と聞かれることがあります。必要になる場面を分けると、要否は少し変わります。

場面英語が要るか
日本の記帳・支払・給与の処理そのもの要らない。証憑も取引先も日本語のことが多い
報告様式への転記(科目コードと金額)対応表があれば、英語力よりも対応表の精度の問題
本国からの質問に答える、差異の理由を説明する要る。ここが実際の負荷
グループの会計マニュアルを読んで処理を決める要る。かつ、会計の内容を理解して読む必要がある

つまり、英語が本当に要るのは下の2行です。ここを社内に残すのか、外に出すのかで、探すべき委託先が変わります。上の2行だけを外に出すなら、日本語だけで回る会社でも受けられます。

委託先が英語での報告・本国の会計基準への組み替え・グループの連結パッケージの記入まで対応できるかは、会社ごとに違います。受けられる前提で話を進めず、契約の前に「どの工程まで受けられるか」を具体的な作業名で確認してください。当社を含め、できると断定している説明があれば、その範囲を書面で確かめることをお勧めします。

6|税務は、経理の外注の範囲に入らない

外資系日本法人では、税務の論点が国内だけの会社より多く出ます。

これらは、いずれも税理士の領域です。税務代理、税務書類の作成、税務相談は税理士の業務で、経理代行会社が行うことはできません。役割分担の考え方は税理士と経理代行は何が違う?役割分担と「両方頼む」が正解な理由に書きました。

外に出せるのは、記帳・支払データの作成・請求・給与計算・月次の資料作成までです。この線は、外注の範囲を広げても動きません。外に出しても会社から消えない義務については経理を外に出しても、会社から消えない義務があるに整理しています。

7|そもそも、外に出す以外の形と並べる

日本法人の経理には、大きく3つの形があります。

向いている場合起きやすいこと
本国または地域統括が見る日本の取引が少なく、型が数種類しかない日本の法令に合わせる部分が手薄になる。日本語の証憑を読む人が要る
日本に経理を1人置く取引の型が多く、その都度の判断が毎日ある1人が辞めた日に全部止まる。採用に時間がかかる
外に出す定型の処理が中心で、判断を持てる人が日本に1人いる社内の机の上のこと(郵便、来客、押印)が見えない。受け手が1人要る

この3択は、日本に子会社を作ったばかりの会社でも同じ形で出てきます。設立1年目の条件で並べた記事が子会社を新しく作ったとき、経理は最初から外に出すか|親会社が見る・人を置く・外に出すの3択を、設立1年目で決めるです。日本法人が1社だけなら、この記事の考え方がそのまま使えます。

グループの中に日本法人が複数ある場合は、集約の順番の話になります。経理のシェアードサービス|グループ会社が複数ある会社の、集約の順番で、寄せる順番は重要度ではなく会社ごとの差が小さい順である理由を書きました。

8|シメゴの場合と、正直に申し上げること

まとめ

外資系日本法人の経理は、二つの帳簿を持つ話ではありません。正本は日本の帳簿に置き、本国への報告はそこからの組み替えとして扱う。この順番を決めるのが先で、委託先を何社にするかはそのあとです。

出す前に決めるのは、締め日が2つあるかどうか、報告の通貨と為替レート、勘定科目の対応表、会計基準の差で処理が変わる項目、そして支払の承認経路の5つです。特に対応表と承認経路は、外注しなくても会社に要るものです。

報告の組み替えを同じ委託先に持たせるかは、日本側に管理部門の担当がいるかで変わります。いるなら社内に残したほうが、本国からの質問に自分で答えられる分だけ早い。いないなら1社にまとめるしかありませんが、そのときは替えるときに両方が同時に止まることを織り込んでください。

日本の帳簿と本国への報告を、どこで切るか。1枚にしてお返しします。

いま日本側で回している処理と、本国から求められている報告の様式をうかがい、外に出せる工程・社内に残す判断・税理士へ送る論点に分けてお返しします。外に出さないほうがよい、という結論になることもあります。

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※本記事は、記載時点での一般的な整理であり、個別の会社における最適な体制を示すものでも、特定の結果を保証するものでもありません。締め日・通貨・科目対応表・会計基準差・承認経路の5点、委託先を分ける/まとめるの比較、英語が必要になる場面の切り分けは、当社の受託実務およびご相談で見てきた範囲に基づく整理であり、統計調査に基づくものではありません。グループ内の報告様式・締切・適用される会計基準は親会社の定めによるため、実際の要否は御社のグループの規程をご確認ください。移転価格、源泉徴収と租税条約の適用、恒久的施設の判定を含む税務の取扱いは税理士に、社会保険・労働保険および外国人社員の在留資格に関する手続きは社会保険労務士・行政書士等の専門家にご確認ください。当社は税務代理・税務書類の作成・税務相談、労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成・提出代行を行いません。