経理代行は、契約の前に試せるか|過去1か月分の証憑で確かめる3つのこと

経理代行を2〜3社まで絞ったあとで、手が止まる会社があります。提案書はどこも整っていて、見積の金額も大きくは違わない。面談の印象も悪くない。それでも、実際に任せたらどうなるかは資料からは読み取れません。
契約の前に試せます。すでに締め終わった月の証憑を1か月分渡して、同じ月の試算表を作ってもらう方法です。本番の経理は止めずに、仕事ぶりだけを先に見られます。以下では、渡すものと渡さないもの、出てきた結果で確かめる3つのこと、試しを断られたときの代わりの手を順に書きます。書類で比べる段階の話は経理代行サービスの選び方にまとめてあるので、ここではその次の段を扱います。
1|試す月は、締め終わった月から選ぶ
試しに使うのは、社内ですでに試算表まで出し終えた月です。進行中の月を渡すと、試しの結果が遅れたときに本番の締めまで遅れます。締め終わった月なら、御社の手元に答えがあります。出てきた試算表を自社のものと並べられることが、過去の月を使う理由です。
月の選び方にも少しだけ注意があります。決算月や賞与のある月は、ふだんと違う処理が混ざるので比べにくくなります。取引の量が平均的で、特別な出来事のなかった月を選んでください。
渡すものと、渡さないもの
| 区分 | 中身 | 理由 |
|---|---|---|
| 渡す | その月の通帳の明細、発行した請求書、受け取った請求書、経費の領収書、カードの利用明細 | 本番で毎月渡すものと同じ形で渡す。整理し直さない |
| 渡す | 勘定科目の一覧、前月末の残高 | これがないと、相手は御社の科目の使い方を推測するしかない |
| 渡さない | その月の仕訳帳、完成した試算表 | 先に渡すと、写せば同じ数字が出てしまう。比べるときまで手元に置く |
表の1行めの「整理し直さない」は、意外と守られません。試しだからと領収書を日付順に並べ、メモを付けて渡すと、相手の作業は本番より楽になります。ふだん経理担当者が受け取っているままの状態で渡してください。
費用を払い、秘密保持を先に結ぶ
1か月分の記帳は、相手にとって実際の作業です。無料でと頼むより、費用を払って頼むほうがよいと私は考えています。払う以上、契約後に担当する人に作業してもらいたい、と条件を付けられるからです。金額は相手の見積に従えばよく、月額の料金を目安に相談する形になります。
もう1つ、証憑には取引先の名前、金額、従業員の経費が載っています。契約を結ぶ前の相手に渡すので、秘密保持の取り決めを先に交わし、試しが終わったあとの資料の返却か削除まで書いておきます。
2|出てきた結果で確かめる3つのこと
確かめること1 自社の試算表との差を、相手が説明できるか
出てきた試算表は、御社のものと一致しないのがふつうです。科目の割り当て方や、計上する月の考え方は会社ごとに違うからです。見るのは差の大きさより、差の理由です。
| 差の出方 | 考えられる理由 | 相手に聞くこと |
|---|---|---|
| 費用の合計は同じで、科目の内訳が違う | 科目の割り当ての流儀が違う | 御社の科目の一覧に合わせられるか |
| 売上や費用の合計が違う | 請求書の日付で計上したか、入出金の日で計上したか | どちらの基準で処理したか。その理由 |
| 預金の残高が合わない | 入力の漏れか、二重の計上 | 残高を通帳と突き合わせる手順があるか |
3行めだけは性質が違います。預金の残高は通帳に答えが書いてあるので、ここが合わないまま提出されたなら、確認の手順が抜けています。1行めと2行めは、聞けば理由が返ってくるはずの差です。「御社の前月の処理を見て、こちらの基準に合わせました」と返ってくるなら、資料を読んだうえで判断しています。
確かめること2 質問が、いつ、どんな形で来るか
1か月分の証憑を初めて見る相手には、分からない取引が出てきます。振込名義だけでは何の代金か分からない入金や、用途の書かれていない領収書です。質問が1件も来ないまま試算表が出てきたら、分からないところを推測で埋めた可能性を考えます。
質問の来方も見ます。作業の途中で1件ずつばらばらに届くのか、一覧にまとめて一度に届くのか。契約後は毎月これが繰り返されるので、御社の担当者が答えやすい形かどうかを確かめてください。委託先への催促が続くときの記事で書いたとおり、質問のリストが早く出てくる委託先ほど、試算表の期日も守られやすくなります。
確かめること3 誰が作業し、返事は何営業日で返るか
面談に出てきた人と、実際に手を動かす人は同じとは限りません。試しの作業をした人の名前と、契約後もその人が担当するのかを聞いておきます。担当が替わったときの扱いは委託先の担当者が替わるときに書きました。
あわせて、日付を3つ記録します。証憑を渡した日、質問が届いた日、試算表が出てきた日です。こちらから質問を返したなら、その返事が届いた日も残します。初めて扱う月は、相手も御社の取引を読み解きながら進めるので、2か月め以降より日数が掛かります。日数そのものより、遅れそうなときに先に連絡が来たかどうかを見てください。
3|試しを断られたときの、代わりの手
頼んでも受けてもらえないことはあります。会計ソフトに御社の環境を作り、科目を設定する手間は、1か月分でも本番と変わらないからです。断られたこと自体は、相手の良し悪しを示しません。
その場合は、契約の形で同じ効果を作ります。
- 最初の契約期間を短くする。1年でなく3か月で始め、続けるかどうかを双方で決める日を置く
- 解約を申し出る期限を短くしてもらう。3か月前の予告が条件なら、最初の半年だけ1か月前にできないか相談する
- 初月の試算表が出た時点で、振り返りの打ち合わせを1回持つことを契約に入れる
どれも、合わなかったときに早く引き返せるようにする取り決めです。契約書のどこに書くかは経理の委託契約書は、金額の次にどこを読むかを参照してください。
4|2社に頼むなら、同じ月を渡す
候補が2社残っているなら、同じ月の同じ証憑を両方に渡します。月が違うと取引の量も中身も変わり、結果を並べられません。費用は2社分かかります。それでも、契約してから合わないと分かって切り替えるほうが、引き継ぎをもう一度やる分だけ手間は大きくなります。
試しには、もう1つ効き目があります。相手が実際の証憑を数えるので、仕訳の件数が確定し、見積の前提が固まります。面談のときの概算と、試しのあとの見積が違っていたら、何の件数が増えたのかを聞いてください。見積の数え方が会社ごとに違う点は経理代行の相見積が横に並ばない理由で整理しています。
まとめ
経理代行は、締め終わった月の証憑を1か月分渡せば、契約の前に試せます。見るのは差の理由を説明できるか・質問がどんな形で来るか・誰が作業して何営業日で返るかの3つです。仕訳帳と完成した試算表は比べるときまで渡さず、証憑はふだんの状態のまま渡します。試しを断られたら、最初の契約期間を短くして、引き返せる日を先に決めておきます。
参考資料・注意事項
本記事は、経理の外部委託を受ける立場から、当社への相談で見聞きした範囲をもとに整理したものです。試しの作業を受けるかどうか、その費用は事業者によって異なります。特定の事業者の無料期間や試用プランを推奨するものではありません。秘密保持や契約の条項の解釈は弁護士に、税務の判断は税理士にご確認ください。最終確認:2026年10月1日。
試す前に、何をどこまで外に出すかを整理します。
いまの証憑の量と社内の体制をうかがい、外に出せる範囲と費用の目安をお返しします。他社と比べるための材料として使っていただいて構いません。
無料コスト診断を受ける →※本記事は、記載時点での一般的な整理であり、個別の事案について法的・税務上の判断を示すものではありません。当社では税務代理・税務書類の作成・税務相談は行いません。
