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経理の委託契約書は、金額の次にどこを読むか|秘密保持・再委託・解約予告・責任の上限

経理の委託契約書は、金額の次にどこを読むか|秘密保持・再委託・解約予告・責任の上限
目次
  1. 1|責任の上限は、委託料の範囲に収まっていることが多い
  2. 2|秘密保持は、範囲と期間を読む
  3. 3|再委託は、許すかどうかより「誰が監督するか」
  4. 4|解約予告は、期間と「そのあと何が戻るか」をセットで読む
  5. 4か所を1枚にすると、こうなる
  6. シメゴの場合と、お伝えしておくこと
  7. まとめ

相見積が出そろって1社に絞ると、次に届くのが業務委託契約書の案です。料金表と対応範囲は見積の段階で読み込んでいるので、契約書では金額と契約期間を確かめて押印に進む。

ただ、経理の委託契約で後から揉めるのは、金額よりも別の条文です。月次の資料に取引先の口座や給与の額が載っている以上、情報の扱いと、何かあったときの責任の分け方が契約書のどこかに書いてあります。その書き方次第で、事故が起きた日に御社が取れる手が変わります。

この記事では、経理代行の契約書案を受け取った社長・管理部門長の方に向けて、金額の次に読む4か所を、読む順に整理します。最初に読むのは、委託先にとって書きにくい「責任の上限」です。当社(シメゴ)の契約書も、この4か所を読まれる側にいます。

なお、この記事は契約書を読むときの一般的な整理です。条文の解釈や、個別の契約で何が有効かは、契約書の文言と事情で決まります。気になる条文は弁護士にご確認ください。

業務委託・準委任・派遣のどの形で契約するかによって責任の所在がどう変わるかは、経理を委託する|業務委託・準委任・派遣で、責任の所在がどう変わるかに書きました。この記事は、形が決まったあとに条文をどう読むかを扱います。

1|責任の上限は、委託料の範囲に収まっていることが多い

契約書の後半に「損害賠償」の条文があります。そこに、次のような一文が入っていることがあります。

受託者が本契約に関して委託者に対して負う損害賠償責任は、直前○か月間に委託者が受託者に支払った委託料の総額を上限とする。

経理代行に限らず、業務委託の契約ではよく見る書き方です。月10万円の委託で上限が「直前3か月分」なら、どれだけ大きな損害が出ても、請求できる額は契約上30万円までになります。たとえば振込の二重払い、源泉所得税の納付漏れによる延滞税、請求書の送り漏れによる入金の遅れ。これらの損害が上限を超えた分は、契約の上では御社の負担です。

委託先の側から見ると、月額に比べて大きすぎる責任は引き受けられない、という事情があります。上限の条文があること自体は、おかしくありません。読むときに確かめるのは次の3点です。

もう一つ、上限の条文と対になっているのが「何をしたら委託先のミスになるのか」です。締め日までに資料が届かなかった月の遅れを、誰の責任にするか。ここが契約書か別紙に書かれていないと、上限の額を議論する前に、そもそも誰のミスかで話が止まります。

2|秘密保持は、範囲と期間を読む

経理の委託先には、取引先の名前と取引の額、従業員の給与、銀行の口座が渡ります。秘密保持の条文は、たいていの契約書に入っています。差が出るのは中身です。

読むところ確かめること聞き返したい書き方
秘密情報の範囲御社から受け取った資料と、記帳の過程でできたデータ(仕訳・試算表)の両方が入っているか「秘密である旨を明示して開示した情報」に限っている。毎月送る領収書や通帳のコピーに、いちいち「秘密」と書く会社はありません
期間契約が終わったあとも、何年間は守る義務が続くか契約期間中だけで終わる。または期間の定めがない
終了時の扱い契約が終わったとき、委託先の手元の資料とデータを返すのか、消すのか。消したことをどう確かめるか返還・消去の定めがない
従業員への義務委託先の担当者にも、同じ義務を負わせるとしているか会社としての義務だけで、担当者の扱いに触れていない

給与や従業員の住所を渡す場合、その部分は個人データの委託にあたります。個人情報保護法では、個人データの取り扱いを委託した会社は、委託先に対して必要かつ適切な監督を行うことが求められています。委託したから責任がなくなる、という形にはなっていません。秘密保持の条文は、その監督をどう行うかの足場にもなります。

3|再委託は、許すかどうかより「誰が監督するか」

経理代行の会社が、仕事の一部をさらに外の人に出していることがあります。入力作業を在宅の作業者に出す、給与計算を提携先に出す、といった形です。これを再委託と呼びます。

再委託そのものが悪いわけではありません。繁忙期に人を足せるので、締めが遅れにくくなる面もあります。読むときに確かめるのは次の3つです。

  1. 再委託してよいかどうか、事前の承諾が要るか。「委託者の事前の書面による承諾を得て」とあれば、御社が知らないうちに外へ出ることはありません。
  2. 再委託先にも、秘密保持の義務を同じ水準で負わせるか。
  3. 再委託先のミスを、委託先が自分のミスとして引き受けるか。ここが書かれていないと、事故が起きたときに「再委託先の責任です」と言われる余地が残ります。

聞き方の例を挙げます。「いま、作業の一部を社外の方にお願いしていますか。している場合、その方は御社の社員と同じ秘密保持の約束をしていますか」。この質問に、誰に何を出しているかを具体的に答えられる委託先は、監督の仕組みも持っていると考えてよいでしょう。

4|解約予告は、期間と「そのあと何が戻るか」をセットで読む

最後が、契約を終えるときの条文です。経理代行の契約には、最低の契約期間と、解約するときの予告期間が書かれていることが多くあります。たとえば「最低6か月」「解約は3か月前までに書面で通知」のような形です。

ここで期間だけを読むと、見落としが出ます。一緒に読むのは次の2つです。

とくに決算の直前に契約が切れる場合を想像してみてください。予告期間が3か月あっても、その間に次の委託先へ引き継げる形でデータが戻ってこなければ、申告の準備が止まります。解約の条文は、委託先が止まったときの備えでもあります。この点は経理を任せた会社が、明日止まったらどうなるかでも詳しく書きました。

4か所を1枚にすると、こうなる

契約書案を受け取ったら、次の表の順に条文を探して、右の列の質問で聞き返してください。

順条文読むところ聞き返す質問の例
1損害賠償・責任の制限上限の額、故意・重過失の扱い「上限は何か月分ですか。二重払いのようなミスが起きたとき、実際にはどう対応していますか」
2秘密保持範囲、期間、終了時の返還・消去「毎月お送りする資料も、秘密情報に入りますか。契約が終わったあと、何年間守られますか」
3再委託事前承諾、同じ水準の義務、責任の引き受け「作業の一部を社外に出していますか。そのミスは御社のミスとして扱われますか」
4契約期間・解約双方の予告期間、終了時に渡すものと形式「御社から解約するときは何か月前ですか。終わるとき、何をどの形式で渡してもらえますか」

4つとも、委託先を疑うための質問ではありません。聞き返したときの答え方で、その委託先が事故の起きた日のことを考えて契約書を作っているかが分かります。条文を直してもらう必要がなく、答えを聞いて納得できれば十分、という結論になることも多いはずです。

この4か所とは別に、月次の試算表を何日までに出してもらうかが契約に書かれていないこともよくあります。毎月こちらから催促している会社は、資料の締め日・提出物・遅れたときの扱いを契約に書く方法もあわせて確かめてください。

シメゴの場合と、お伝えしておくこと

まとめ

経理の委託契約書で、金額の次に読むのは4か所です。責任の上限、秘密保持の範囲と期間、再委託の監督、解約予告とそのあと戻るもの。責任の上限は委託料の範囲に収まっていることが多く、それ自体はおかしくありません。上限の額と、何をしたら委託先のミスになるのかを、あわせて確かめてください。

秘密保持は範囲と期間、再委託は許すかどうかより誰が監督するか、解約は期間と戻ってくるものをセットで読みます。4か所の質問への答えが具体的な委託先ほど、事故の起きた日の動きも具体的です。

届いた契約書案と見積を、一緒に読みます。

いまお手元にある経理代行の見積と契約書案をうかがい、金額と作業時間の見通し、確かめておきたい条文を1枚にしてお返しします。他社でご契約いただく結論になっても構いません。

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※本記事は、記載時点での一般的な整理であり、個別の契約について法的な判断を示すものではありません。記事中の条文の例と読む順は、当社の受託実務およびご相談で見てきた範囲に基づく整理であり、統計調査に基づくものではありません。契約書の解釈・有効性は弁護士に、税務申告・税務相談は税理士にご確認ください。当社では税務代理・税務書類の作成・税務相談は行いません。

浅香 祐輔

この記事を書いた人

浅香 祐輔(Never Red株式会社 代表取締役)

大手コンサルティングファーム(アクセンチュア/アビーム)出身。専門は経営管理改革とSAP財務会計(FI)。直近はSAP導入プロジェクトのPMとして、50名超のチームを率い、経理部門約30名のメンバーをまとめました。経理代行「シメゴ」を設計・運営しています。

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