経理の採用が難しい理由|採用に頼らず経理を回す3つの方法

この記事の要点
- 経理の採用が難しいのは、処理も判断も1人に任せる求人になっていて、当てはまる経験者が限られるからです。
- 採れないあいだも、支払と月次は止められません。求人は続けたまま、業務を減らす、派遣を使う、経理代行に出す、の3つを並行して検討します。
- 処理を外に出すと、採る人に求める条件が変わります。費用は、任せる範囲をそろえてから比べます。
経理の求人を出したのに、応募が来ない。来ても、求める経験に届かない。そのあいだの支払と月次は、社長か、残った担当者が回している。この記事は、その状態にある会社に向けて書きます。
私は、経理の採用が難しい理由の多くは、求人の組み立て方にあると考えています。以下では、理由を2つに分けて示したあと、求人の条件の見直し方、採用に頼らずに経理を回す3つの方法、採用と経理代行の費用の比べ方を順に書きます。担当者の退職がきっかけで求人を出している会社は、先に経理が辞める会社はやばいのかを読んでください。退職日までに受け取る業務の順番を書いています。
経理の採用が難しい理由
理由は、仕事を探す人の側と、求人を出す会社の側に1つずつあります。
図1 経理の採用が難しい2つの理由
経験者の数が限られる
1人に処理も判断も求めている
条件を1つの求人に重ねるほど、当てはまる人は減る。
経験者の数が限られる
厚生労働省は、ハローワークの求人と求職の状況を職業別に毎月公表しています。令和8年7月分で「会計事務従事者」を見ると、有効求人が17,745人、有効求職者が31,928人で、有効求人倍率は0.56倍でした(常用・パート含む)。同じ月の新規求人は6,527人、紹介件数は10,321件、就職件数は1,432件です。同じ表の職業計は1.05倍、「一般事務従事者」は0.29倍です。
この数字では、会計事務の仕事を探す人が求人の数を上回っています。一方で、この表は、求職者を経験の年数やできる業務で分けていません。求人票に「実務経験3年以上」「月次決算を1人で締められる方」と書けば、対象はこの31,928人の一部になります。私は、求人が決まらない理由の一つはここにあると見ています。
なお、この統計はハローワークを通した求人と求職を集計したものです。求人サイトや人材紹介会社を通した分は含まれません。
求人倍率0.56倍の読み方
ハローワークの集計では、仕事を探す人の数は、求人の数より多い。私はこの数字を、採用が進まないときは人数を嘆く前に、求人票に並べた条件を見直す余地がある、と読んでいます。
1人に処理も判断も求める求人になっている
経理の仕事は、性質の違う2つに分けられます。
1つは処理です。領収書や請求書から仕訳を入力する、請求書を発行する、入金を消し込む、振込のデータを作る。手順が決まっていて、取引の量に応じて増える仕事です。
もう1つは判断です。どの科目で、どの月に計上するかを決める。支払ってよい請求かを確かめる。月次の数字を見て、おかしいところに気づく。社長や税理士からの質問に答える。会社の取引を知っていないとできない仕事です。
経理担当者を1人だけ置く会社が求人を出すと、この両方を1人に求める形になります。前任者が1人で両方を担っていたので、仕事内容の欄にその全部を書くことになるからです。処理を速く正確にこなせて、判断も任せられて、勤務地と給与と勤務時間も合う人。条件を重ねるたびに、当てはまる人は減ります。
採用が難しい原因は、1つの求人に、処理と判断の両方を載せていることにあります。ここを分けると、求人票の書き方も、採用以外の選択肢も変わります。
採用できないまま放置すると起きること
欠員が出ても、経理の仕事の量は減りません。採用が決まるまで、誰かがその分を持ちます。誰が持つかで、起きることが変わります。
- 社長が持つ。記帳や振込の作業に時間を使い、本業に充てる時間が減る
- 残った担当者が持つ。1人に仕事が集まり、処理を見直す人がいなくなる。その人が辞めれば、同じ欠員がもう一度起きる
- 誰も持たない。記帳がたまり、月次の数字が出なくなる
3つめがいちばん重くなります。取引先への支払や税金・社会保険料の納付には期限があり、求人が決まるのを待ってくれません。期限のある業務の一覧は、経理が辞める会社はやばいのか|退職日までに会社がやることに表でまとめました。
「採用が決まったら」を期限にしない
採用が決まる日は読めません。求人を続けるかどうかとは別に、いつまでに決まらなければ別の方法に切り替えるかを、先に日付で決めておきます。
採用を続けながら、求人の条件を見直す
採用をやめる必要はありません。求人は出したまま、求人票を次の順で見直します。
- 仕事内容を、処理と判断に分けて書き出す。前任者がしていた仕事を1行ずつ並べ、どちらに当たるかを付ける
- 必須の条件と、入社後に覚えればよい条件を分ける。会計ソフトの操作や自社の科目の使い方は、入社後に覚えられる
- 働き方の条件を確かめる。フルタイムの専任だけで募集しているなら、短時間や週に数日の勤務でも回る量かを見る
- 給与を確かめる。同じ地域で、同じ仕事内容を載せている他社の求人と並べる
1で書き出した処理の仕事は、次の節の方法で社内から減らせます。減らしたあとの仕事量で2から4をやり直すと、求人票に残る条件は少なくなります。
条件を広げて未経験の人を迎える場合は、教える人が社内にいることが前提になります。この点は、末尾のよくある質問で触れます。
採用に頼らず経理を回す3つの方法
方法は3つあります。業務を減らす、派遣を使う、経理代行に出す。どれか1つを選ぶものではなく、組み合わせて使えます。採用を加えた比較を先に示します。
表1 採用・派遣・経理代行の比較
| 比べる点 | 採用 | 派遣 | 経理代行(シメゴの場合) |
|---|---|---|---|
| 契約の相手 | 自社 | 派遣会社 | 経理代行の会社 |
| 仕事の指示 | 自社が教え、自社が指示する | 派遣先である自社が指示する | 契約で決めた範囲を、代行側が行う |
| 月の費用 | 月およそ33万円(給与約25万円+社会保険の会社負担約3.8万円+賞与の月割約4万円。経験者を1人雇う場合の一例・目安) | 派遣会社の見積による | 月5万円から(税別。仕訳数で3プラン) |
| 始めるまで | 求人から入社まで。日数は読めない | 派遣会社の紹介による | 引き継ぎは最短1週間 |
| 期間の決まり | 自社との雇用契約による | 同じ事業所での受け入れは原則3年まで(延長の手続と、対象外の人がある) | 契約は6か月から |
| 社内に残る仕事 | 教育と、処理の確認 | 日々の指示と、処理の確認 | 資料の共有と、支払の承認 |
業務を減らす
人を足す前に、仕事の量を減らします。量が減れば、求人票に書く条件も軽くなります。
- 銀行口座とカードの明細を会計ソフトに取り込み、手で入力する件数を減らす
- 現金での経費精算をやめ、振込かカードに寄せる
- 取引先への支払日を、月に1回か2回にまとめる
- 請求書の発行の手順を1つにそろえる
どれも、やり方を決めて社内に伝える人が要ります。何から手をつけるかは、経理の人手不足の原因と対策の記事に書きました。
派遣を使う
派遣は、派遣会社が雇っている人に、自社で働いてもらう方法です。雇用主は派遣会社で、仕事の指示は派遣先である自社が出します。費用と、来てもらえるまでの日数は、派遣会社の見積と紹介によります。
使う前に確かめることが2つあります。
1つめは、指示を出す人が社内にいるかです。何を、どの順で、どう処理するかを決めて伝えるのは自社です。判断のできる人が社内にいない状態で派遣の人だけを迎えても、指示が出せません。
2つめは期間です。派遣先が同じ事業所で派遣を受け入れられる期間は、原則3年が限度です。3年を超えて受け入れようとする場合は、事業所の過半数労働組合などから意見を聴く必要があります。この手続で延長した場合も、同じ人を同じ課などの組織単位で3年を超えては受け入れられません。派遣会社で無期雇用されている人や60歳以上の人などは、この期間制限の対象外です。人が替われば、そのたびに自社が教え直します。
経理代行に出す
経理代行は、人を迎える代わりに、業務を渡す方法です。処理の仕事を、契約で決めた範囲で外に出します。
経理代行のシメゴの場合、ライトが月5万円(〜100仕訳。記帳と、月初から5営業日で納品する月次レポート)、スタンダードが月10万円(〜300仕訳。請求書発行・入金消込と、支払管理として振込データの作成が加わる。給与計算はオプション)、フルが月15万円(〜600仕訳。給与計算を20名まで含み、資金繰り表と経営ダッシュボードが加わる)です。いずれも税別の月額で、初月のみ導入設定費が5万円かかります(クラウド会計の新規導入を伴う場合は10万円)。契約は6か月からで、仕訳数が目安を超えた分は従量です。会計ソフトはfreeeとマネーフォワードに対応しています。税務申告と税務相談は当社では行わず、提携の税理士が担当します。社会保険の手続は提携の社労士が担当します。
外に出しても、社内に残る仕事があります。月初に資料を共有すること、支払を承認すること、処理についての質問に答えることです。判断の仕事は社内に残ります。
図2 処理と判断を分けたときの体制
外に出すのは処理。採る人の仕事は、資料を渡すことと判断・確認になる。
こうして処理が社内から減ると、採る人に求める条件が変わります。求人票から「仕訳入力の実務経験」「月次決算を1人で」を外し、「社内の資料を集めて、期日までに渡せる」「数字を見て、おかしいところを聞ける」に書き換えられます。仕事の量も減るので、専任で1人を置く形のほかに、総務との兼務や短時間の勤務で足りるかを確かめられます。条件が減った分、当てはまる人は増えます。
一人経理の会社が最初にどの業務を外に出すかは、中小企業の経理アウトソーシングの記事にまとめています。いまの仕訳の量で、どのプランに当たるかを知りたい場合は、無料の経理コスト診断からお知らせください。
採用と経理代行の費用の比べ方
経験者を1人雇う場合の費用を、給与約25万円、社会保険の会社負担約3.8万円、賞与の月割約4万円で試算すると、月およそ33万円になります。これは一例・目安で、給与の水準によって変わります。シメゴの月額は、プランによって5万円、10万円、15万円(税別)です。
月額だけを並べると、経理代行のほうが低く見えます。ただ、この2つは中身が違うので、次の3点をそろえてから比べます。
1つめは範囲です。雇う人に任せるつもりの仕事を書き出し、それが含まれるプランの金額と比べます。範囲でいえば、記帳と月次レポートだけならライト、請求書の発行や振込データの作成まで任せるならスタンダード以上に当たります。仕訳数の目安も合わせて見ます。
2つめは、月額の外にかかるものです。採用の側には、採用費、教育、急な欠勤への対応、退職時の引き継ぎが加わります。経理代行の側には、初月の導入設定費と、仕訳数が目安を超えたときの従量、それに社内に残る仕事の時間が加わります。
3つめは、含まれないものです。シメゴの月額に、税務申告と税務相談は含まれません。税理士に支払う費用は、別に見ておきます。
費用の内訳を1項目ずつ並べた比較は、経理担当を1人雇う vs 経理代行|「本当のコスト」を並べて比較したに書きました。金額を比べる前に、社内に置きたい仕事が何かを決めておくと、比べる対象がぶれません。
この記事のまとめ
- 会計事務従事者の有効求人倍率は0.56倍(令和8年7月)。ただし、統計は求職者を経験で分けていない。
- 採用が難しい原因は、1つの求人に処理と判断の両方を載せていること。
- 求人は続けたまま、業務を減らす、派遣を使う、経理代行に出す、を並行して検討する。
- 処理を外に出すと、採る人に求める条件が変わる。費用は範囲をそろえて比べる。
よくある質問
- 経理の採用は、なぜ難しいのですか
入力や発行といった処理と、科目や支払の判断を、1人に求める求人になっているからです。条件を重ねるほど、当てはまる経験者は限られます。処理と判断を分け、処理を社内から減らすと、求人票の条件が変わります。
- 未経験者を採ってもよいですか
教える人が社内にいれば選択肢になります。処理も判断も未経験の人に1人で任せると、処理を確かめる人がいなくなります。先に処理を外に出しておけば、採る人の仕事は資料を集めて渡すことと確認になり、経験の条件を下げられます。
- 採れるまでのあいだは、どうすればよいですか
先に、支払と納付を止めない手当てをします。そのうえで、業務を減らす、派遣を使う、経理代行に出す、のうち自社に合うものを決めます。いつまでに採用が決まらなければ切り替えるかを、日付で決めておきます。
- 派遣と経理代行は、何が違いますか
派遣は人に来てもらう方法で、仕事の指示は自社が出します。経理代行は業務を渡す方法で、契約で決めた範囲を代行側が行います。指示を出せる人が社内にいるかどうかが、選ぶときの分かれ目です。
参考資料
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)について」(令和8年8月28日公表)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75707.html - 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」参考統計表(参考統計表7-1 全国計、常用(パート含む)、職業別)
https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001741200.pdf - 厚生労働省「労働者派遣事業について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/roudoushahakennjigyou.html - 厚生労働省・都道府県労働局「派遣社員を受け入れるときの主なポイント 派遣先の皆さまへ」
https://www.mhlw.go.jp/content/000852557.pdf - シメゴの料金と業務の範囲、経理担当を1人雇う場合の試算
https://shimego.jp/
有効求人倍率は、公共職業安定所(ハローワーク)における求人と求職を集計したもので、職業の区分は同資料の表記によります。派遣の期間制限には、延長の手続と対象外の場合があります。受け入れの可否は、派遣会社か都道府県労働局にご確認ください。最終確認:2026年10月1日
※本記事は、記載時点での一般的な整理であり、個別の事案について法的・税務上の判断を示すものではありません。当社では税務代理・税務書類の作成・税務相談は行いません。
